夢のもつれ
□軌跡
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時刻は6時ちょうど。
こんな時間に起きたのはもう最近当たり前になっている。
別に何かある訳ではない。
相変わらず依頼は来ないし、早く起きてするべき事もない。
ただ、体が起きてしまうのだ。
3日前神楽が居なくなってから。
「神楽…」
ふと押し入れに目をやるが、そこはガランと誰もおらずただ「ピン子」という貼り紙が虚しく貼られていた。
いつも…いつもならこんなに早く起きる事もなく、10時頃に新八に起こされて三人で朝飯食べて…
今は二人だけ。
あの眩しい笑顔は見る事はできない。
「…おはようございます銀さん」
いつの間にか新八が来ていた。
「…ああ、お前随分早いな」
新八は神楽が居なくなってから、毎朝とても早く万事屋に来ていた。
それは俺を気遣っての事だろうとは安易に予想がつく。
「今日は姉上も一緒に捜してくれますから、頑張りましょう!」
「…アイツらも来んのかね」
アイツら…という指事語には新八も気付いているようだ。
顔を罰が悪そうに下に向けているから。
「…銀さん。神楽ちゃんがいなくなったのは沖田さんのせいじゃ…」
「わーってるよそんなもん!!!」
俺の怒声は家の中に響き、後悔の波が襲ってくる。
「…悪いな」
「いえ…銀さんの気持ちはわかってますから。…僕だって沖田さんを責めたいです。なんでアンタがいたのに神楽ちゃんがさらわれるんだって…でも一番いたたまれないのは沖田さんじゃないですか?きっと自分を責めていると思います。悲しいのや悔しいのは皆一緒ですよ。でもそれで終わっちゃ駄目だと思うんです。」
「……」
「今は恨みとか怒りとか悔しさとか…そういう感情は置いておいて神楽ちゃんを探す事に専念しましょうよ。真撰組は春雨の事を調べているはずだし。僕達は僕達にできる事をしましょう。」
全く正論である。
こんな正論を言える新八は俺よりずっと大人だ。
「…悪いな新八。俺本当に子供だわ…俺らがしっかりしなきゃいけねーのにな。」
ははっ…と柔らかく笑った新八は朝御飯食べましょうか、と言って台所へ向かった。
「…今日は吉原の方へ行ってみるか」