短編

□俺と彼女と時々彼女の兄貴
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面白く無いこと




「サド−!今日は兄ちゃんが早く帰ってくるから一緒に帰れないネ。ごめんヨ。」


またこれか…
俺が神楽と付き合いだして2ヶ月。
お互いに照れもなくなって済ますこと済まして。
一番いいときだ。

なのに3日に一度のペースでこの言葉を聞く。

神楽の家はいろいろと複雑らしい。母親はおらず、父親も仕事で忙しいと言うのだ。
ということは神楽にとって兄貴は一番近い存在であり、一番頼れる存在だ。
最初の頃はそういう事情も含め納得していた。

が、いくら仲がいいといえど3日おきにこれでは俺としては面白くないのだ。

「ちょうどいいや。神楽、俺も家に行きまさぁ。」

「…はぁ?家ってまさか私の家アルか?!」

「決まってんだろィ」

神楽は顔を一気に曇らせた。
なんだよ…兄貴には紹介できないっていうのかよ。

「…ごめんネサド。お前を兄貴に紹介するわけにはいかないネ。…私の兄貴めちゃめちゃ強いアル。私の彼氏ですって言ったらサド殺されちゃうヨ…」


なんだソレ…

ますます気にくわない。

そんなことを言われるとやっぱり兄貴に会ってみたくなる。

と、その時



「神楽?」

「…兄ちゃん!!」

そこには神楽と瓜二つの顔をした優男が立っていた。
ニコニコしててなんだか気持ち悪い。

「…アンタが神楽の兄貴かィ」

「ん?神楽そいつ誰?」

神楽はさっきよりもっと顔を曇らせる。

「ぁ…えっと…友達アル。」

友達…

なんだかその言葉にひどく傷ついた。


「違いまさァ。俺は神楽の彼氏やってる者でィ」

するとさっきまで笑っていた兄貴の顔なら笑顔が消えた。
そして神楽と同じ青い目を向ける。


「…神楽ーこいつこんなこと言ってるけどどういう事?」

神楽はうつむいている。何を話せばいいのかわからないようだ。
そんな神楽をみてどこか楽しく思える俺は本当にSだと思う。



「どうも何も言った通りでさァ。」

するといきなり視界が暗くなる。
そして体が宙に舞ったようだ。


「ぐはっ…!」


「サド!!」

「ありゃりゃ。これだけでくたばってんの?」

「兄ちゃんやめるヨロシ!!…私サドと別れるよ…」



…なんだって…?


「神楽?…今の冗談だよな?」

「…ごめんネサド。でもこうするしかないのヨ。…兄ちゃん帰ろ」


神楽の兄貴が勝ち誇ったような顔をしたので思わず襲いかかる。


…けれどいとも簡単に拳をとられる。


「なんだ。ヘボだと思ったのに意外に骨がありそうだね。でも神楽は渡さないよ。神楽は俺のだからね。」


すると兄貴は神楽を引っ張ってさっさと帰ってしまった。

その時の神楽の顔が何か言いたそうで悲痛な顔をしていた。




待ってなせェ神楽、必ず迎えにいくからよ。





END
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