夢のもつれ

□母さん
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『マミー…マミー死なないでヨ』

薄暗い光の中、心細い灯火が消えようとしていた。


『マミーがいなくなったら…私…』


『…神楽』



ごめんね、愛しているわ





灯火は静かに火を消した。






「神楽?」

「っ!!」


いきなり意識を戻されたような、嫌な感覚が神楽を襲った。


「どうしたの、ぼーっとしてるけど」


「…あぁ、別に大丈夫ネ」


白昼夢という類いのものだろうか。

久しぶりにマミーの最期が頭の中に浮かんできたのだ。



荒い呼吸を繰り返し、虚ろな瞳を私に向けたマミー。


孤独という感情がこれでもか、というくらいに体を支配していた不思議な感覚は忘れない。



「…マミー…」


「……」




任務は一応片がつき、第七師団一向は船艦に戻っていた。


今私と神威がいるのは船艦内の食堂で、目の前にはずらりと食事が並んでいる。

けれど何故か食べる気にはなれなかった。



ちらりと前の席に座っている神威に目をやる。

神威は相変わらずもしゃもしゃと飯を口に運んでいた。


『もう一度兄ちゃんって呼んでくれない?』


あの時、神威は確かにそう言った。

ーーあれはどういう意味だったんだろう。


神威が私を妹として見てくれている、という事?


そういえば今髪につけてる髪飾りをくれた時だってそんなような事を言っていた。


でも…神威は私とマミーを捨てた。


家を出ていくなら他にかける言葉はいくらでもあったはずだ。

その上神威は冷たい声音で兄らしからぬような言葉を平気で言ってのけたのだ。


そんな奴が…ありえない、私を家族と思っているだなんて。






 
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