夢のもつれ
□蝶々
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その土地は夜兎の星とは大分違い、大勢の人で溢れかえっていた。
様々な人種が混同している様で、その中には人間もいた。
「…で?」
「何アルか」
「…こんなに人がいたらどれが標的かわかないじゃないか。しかもこの暑さって…殺すよ」
ガシャン、と片腕に向かって傘を向ける神威。
そう、暑いのだ。
この灼熱地獄は地球以上。
私は地球にいたから少なくとも神威や片腕より感じる暑さは和いのだろうが、汗がさっきから滴り落ちてくる。
神威はというと、吉原の時の様な包帯は巻いていなかった。
ほとんど日を浴びる事のない神威は私より太陽に弱いのだろう。
そのため、さっきから片腕をイライラの捌け口としていた。
「…怒るなら太陽に向かってくれ。標的ならきっとすぐに見つかる。」
龍神族−−
赤い瞳と白髪が特長の種族。
寒さに弱いため、いつでも厚着をして顔を隠している。
戦闘方法は素手。
「…で?」
「だから、このクソ暑い中を不自然に厚着している奴がターゲットってワケだ。」
「それだけ?どこにいるかもわからない奴をこの暑い最中探し回らなきゃいけないの?殺すよ」
ガシャン、と本日二回目の嫌な音が聞こえてきた。
「おい、お前らこんなやり取りしてる暇があるならとっとと探すアル」
太陽が照り付ける中、私はそそくさと歩き出した。