夢のもつれ
□不器用な優しさ
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「お嬢ちゃん、いい加減食べてくれねェか。…オジサンがお前さんの兄貴にしばかれるんだよ」
そんな事知るか。
私はかれこれ3日はこの春雨にいる。
兄貴に捕まって以来、水も食べ物も何も口にしていない。
兄貴達と同じ仕事をするならいっそのこと死んだ方がマシだ、そう思ったのだ。
「何回もうるさいアル。とにかく私は何も欲しくないネ。とっとと失せろヨ」
そう言って目の前に出された食事を床に落とす。
阿伏兎はやれやれ、とため息をつき部屋から出ていった。
プシュッとドアが閉まる音を聞けば同時に空腹を知らせる音がなる。
「もう、なんでもいいから体に入れたいネ…」
「じゃあ食べなよ」
「!?」
閉まっていたと思っていたドアが開き、一番顔を会わせたくない相手、神威が立っていた。片手には山盛りのご飯を持って。
「やっぱり痩せ我慢じゃん。ほら水ぐらい飲んだら?そのままじゃ死ぬよ
」
「ふん、こんな所でなら死んだ方がマシアル。」
バシャッ
「!?」
一瞬何が起こったかわからず、呆然としていたがすぐに頭が理解する。
滴り落ちる、水
「な…何すんだァァァァ!!このくそ兄貴!!」
神威はにっこりと笑いながら水を私に向かってかけたのだ。
「とりあえずお風呂入りなよ」
「はぁ!?何言ってるアル!お前がぶっかけたくせに…」
「いいから」
と言って神威は私をひょいっと抱えて風呂場に向かう。
「何するんだヨ!!離せェェェェ!!」
「いーからいーから。あ、服は用意してあるからネ。」
ぽいっと脱衣場に私を投げ捨てた。
「…くそ…なんで」
とりあえず、私はお風呂に入る事にした。