朽木さんち

小さな足音
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パタパタパタ……



朝から響く軽快な足音。


重い目蓋を上げふと枕元の目覚まし時計に目をやると、針は6時25分−−目覚ましが鳴る5分前だ−−を指しているところだった。



「ねえさま!おきてください!!」



ガチャリとドアノブが回され、甲高い声がルキアを呼ぶ。

黄緑のチェックのパジャマを着ているこの小さな少女……いや、幼女は朽木白哉と緋真の愛娘、朽木和由(なゆ)である。


ルキアの姪にあたる和由は、毎朝目覚ましのなる5分前にルキアを起こしにこの部屋にやってくるのだ。



ルキアにとって和由は目に入れても痛くない程溺愛している姪である。


しかし、朝の貴重な5分を毎度毎度邪魔をされるのだけは受け入れがたい。



「目覚ましがなるまで眠らせてくれ……」



そう言って頭から布団を被ると、ルキアは再び夢の世界へ旅立とうとする。


和由はくりくりとした二重目蓋の深紫の目を一瞬大きく開くと、次は眉を八の字に下げ小さな手でゆさゆさとルキアを揺すった。



「ねえさま、おっきして……」



か細い声でルキアを呼ぶ。


今年で5歳になる和由だが、時折起きることを『おっきする』といったように幼児語を話す。


本人は頑張って幼児語を話さないように努力しているようだが、度々出てしまう舌っ足らずな言葉遣いがルキア達にとっては可愛くて仕方ない。


ルキアはまだ覚醒仕切っていない身体をどうにか起こすと、自分のベッドの脇に立っている小さな身体を抱き上げ膝に乗せた。



「お前には適わないな」



おはようと頭を撫でてやると、擽ったそうに目を瞑る。


それから和由は丁寧にお辞儀をしながらおはようございますと頭を下げると、ルキアの頬にちゅっとキスをした。


これが毎朝の日課なのである。





「和由、またルキアのところにいたの」



和由がルキアと戯れ合っているところに、和由の母、ルキアの実姉の緋真がやってきた。



ルキアの膝の上にちょこんと乗っている娘を抱き上げると、


「和由はルキアが大好きね」


と和由の頭を撫でた。


和由は先程と同様に擽ったそうに目を瞑っている。


緋真にも挨拶とキスをし、和由は満足そうににこっと笑った。



「おはよう、ルキア」


「おはようございます、姉様」



ベッドから降りた妹に緋真は声を掛ける。

それにルキアは答えると、まだ鳴っていない目覚ましを裏返し、ONからOFFに切り替えた。



(ここ最近目覚ましの音を聞いていないな……)



そんなことを思いながら、目覚まし時計を元の場所に戻した。



カーテンを開ければ柔らかな日差しと共に軽やかな鳥の囀りが聞こえてくる。




朝の眠りを妨げられるのは遠慮してほしいが、こんな爽やかな朝も悪くない。



晴れ渡る空と、可愛い姪の笑顔を見ながら、ルキアはそんなことを思っていた。




fin
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