atonement for beautiful sins U

□密会×開始×示唆
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「やっと会えた」

某ホテルの一室。
短めに整えられた黒髪。
少し切れ長の流し目は髪と同じ黒色。
そこに立っていた男は、「いらっしゃい」と気前よく彼女を迎え入れた。

「いつから来てたんですか?」
「2、3日前かな」

ルイをイスに座らせ、自分は彼女に紅茶をいれる。

「それにしてもお前は全然変わらないな、声からそうなんだろうな、って思ってたけど」
改めて何年かぶりに見る友人の姿にうんうん、と頷きながらそう声を洩らせば
「ルイートもあまり……、といいたいところですが、貴女は大分変りましたね。
雰囲気が柔らかいです」
いれた紅茶を彼女の前に差し出しながら、男、ナオはそう言葉に応えた。

「そうか?」
ありがとう、と礼をいい、もらったそのカップに口をつけては、そう問いかける。
その口には薄い笑み。

「はい、あの頃と大分……、あぁ、そういえば……」
ナオも彼女の向かい側のイスへと腰かけると、何かを思い出したように口を開く。

「ここのオークションですが、彼らも来ますよ。
幻影旅団≠ェ」

彼の放った単語にルイはひた、と彼を見つめた。

「まぁ、彼らの目的は、アンダーグラウンドのオークション商品です。
遭遇する確率はかなり低いとは思いますが、一応覚えておいてください。

会いたくはないんでしょう?」

ナオは、微笑を浮かべ、彼女を見つめ返すと
「心配いりませんよ、私は何も言いません。
今でも旅団とは懇意にしていますが、貴女のことに関しては一切口を開いてませんので」
先手を打つように、ルイが問いかけようとしていたことの答えを口にした。

それが少々、気に食わなかったのか
「別に、そんなこといいのに」
と思わず応えてしまう。

「あれ、いいんですか? 私が彼らに情報を渡してしまっても?」
「そんなことする気、ないくせに」

ちょっとした冗談のつもりだった。
やはり、ルイートには通じないか、と肩をすくめるナオは
「まぁ、そうですけどね」
と悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「あと、私に何か聞きたいことは?」

カチャリとティーカップの音だけが場を占めるようになったから、ナオが彼女に言葉を求める。
わざとらしく首をかしげるルイに、

「そういう飄々とした態度をとるのは変わりませんね」
と茶化したのち、「ただ私に会いに来た、ってだけではないでしょう?」と。

ルイは話が早い、とばかりにニヤリ、口角をあげた。

この目の前の昔からの悪友はこんなとこがあるから、嫌いじゃない。
寧ろ、ゴンと同じくらい好きで、それでいて尊敬していたりする。
勘が良すぎるのに、決して自分からは踏み込まない。

空になったティーカップをテーブルに戻せば、

「ちょっと大金が必要でさ。
1週間くらいの短期で、それでいてそれなりに稼げる仕事ほしいんだよね。
内容は問わないからさ」

きっと彼なら自分の要求に応えてくれるだろうという確信の元、そんなお願いを口にした。


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