atonement for beautiful sins U

□帰郷×これから×箱
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「ミトさーん!!」


場所はクジラ島。

天気はなかなか、良好であり
選択日和だと、それに勤しんでいたミトは
突如聞こえた声に思わず顔を上げた。


視線の先には数ヶ月も前に島を出ていった少年少女の姿と
もう1人、彼らの友達だと思われる少年の姿。

「ゴン!? ルイ!?」

咄嗟に彼女は声を出していた。

「「ただいま!!」」

少年少女、ゴンとルイは笑顔でそう返し
彼らの少し後ろにいた少年、キルアも
こんにちは、と会釈をした。


取りあえずは、とミトは彼らを家にいれる。


「帰ってくるなら、教えておいてよ!!
何にも用意してないわよ」

と、慌てるミトに対し
適当でいいとか、ただ苦笑するだけとかの対応が見られた。


「そーだ。準備する間にみんなでお風呂入ってきなさいよ」

妙案だと言わんばかりのミト。

事実

「あとで」

と切り返すゴンに対して

「今!」

と有無を言わさない様子である。


「んじゃ、行くか。
いやぁ、考えてみれば、この3人で風呂は入ったことねーよな」

平然と促すのはルイであって。

「へ?! 何でお前も?!」

と、変な所で対応しきれていないのはキルアだ。


ルイにしては、ミトがわざわざみんな≠ニ言った意図を
面白おかしく解釈しての行動なのだが
イマイチ、キルアには理解しきれていないよう。

普段の態度こそは、男らしくもあるルイではあるが
正真正銘の女の子。
思春期真っ只中の少年としては意識しないでは
いられないのは至極全うなことである。

しかし、それが通じないのが長年、彼女と一緒に暮らしているゴンであって。


「そうだね、じゃあ行こう」

と、しっかりキルアとルイの腕を掴んで進み出した。

戸惑うキルアと少々焦りだしたルイ。


「えーと……。ゴンくん……? ゴンさん?」

廊下も中頃まで進んでルイは彼に声をかけた

「うん、何?」

笑顔で振り向くゴン。

「本気で3人でキャッキャッとお湯につかるのかなぁって」

「ルイが言い出したんじゃない」


ゴンも分かってて言うのだから、侮れない。


「分かった。こーさん」


あいているほうの手を挙げてルイはその意を示す。


「もう、ルイ。
あんまり、キルアを驚かせないでね」

ゴンが眉を下げてそう言った時には
思わず、キルアもルイも互いに目を見合わせた。


お前が言うな

彼らは一言一句違わずそう思ったに違いない。



***


「ミト。何か手伝うことは」

解放されたルイはキッチンへ再び足を戻した。


「あら、ルイ」

けしかけた張本人は何食わぬ顔で応える。


「じゃあ、サラダの付け合わせを作ってもらえるかしら」


キッチンでは調理の音が我を主張していた。


「試験はどうだったの」

手を休めることなく、ミトは尋ねる。


「楽勝」

同じく、手を休めることなくルイも答えた。


「大体、12歳になるかならないかくらいのジンが受かったんだ。
16にもうすぐなるオレが受からないでどうするよ」

それを聞いたミトは複雑そうに笑んだ。


「あんたは本当にジンに対して敵意剥き出しよね」

「……あ。ごめん」

何となくではあるが自然とこの島では極力、ジンについて触れるのを
ルイは躊躇っていた。

特にこの家では。

「いいのよ」

何に対する謝罪だったのかルイ本人も分からなかったが
ミトはそれでも何かを察したのか、軽くいいやる。


「……そういえば。
ゴンにこのこと教えてしまったよ」

野菜を包丁で、器用に刻みながら
ルイは何事もないように言った。

「え?」

「バラしてしまったんだ。
オレがジンと面識あること」


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