有害灯
□憂い
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雨が降っていた。
しとしと、じとじと。
【有害灯】
第壱話 憂い
5月も終わる頃、憂鬱を振りまく梅雨の兆しが見えはじめた。
ここ最近、悪天候が続き洗濯物もろくに乾かせていない。このままでは着る服が無くなってしまう。
近い内にコインランドリーに行くべきか……、
悩む私を余所に空からはしとしとと雨粒が落ちてくる。窓の外は靄に包まれていて1メートル先すら見えない。
サァアァ、とだだ雨が降る音だけが嫌に響いていた。
うっすらと汗ばんだ頬に、肩まで伸びた黒髪が張り付く。いっそのこと髪も切ってしまおうかなどと思いを馳せながら、そう言えば長髪が好きだと言った彼の為に髪を伸ばすのだったと再認識。
煩わしさと不快感に眉を寄せながら髪を結び、出掛ける支度を始めた。
相変わらず雨はしとしとと降り続けている。
止む気配など、微塵もなかった。
せり上がる不快感を飲み込みながら、必要な物だけ詰めた鞄を持って玄関先でお気に入りの、淡い紫の傘を手にする。
このドアをあければ、あの有害な光に当たらなくてはいけない。
大嫌いな、光に。
しかし残念ながら時間は差し迫っている。
早く行かなくては遅刻だ。
さらに込み上げた吐き気を無理やり治めながら私は立て付けの悪いドアを力いっぱい押し開いた。
今日も、また。
憂鬱な8時間が始まる。
最悪だ。