drrr!!
□シロップのきみ
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「きゅうり」
「リンパ球」
「うなぎ」
「ぎ、ぎ……銀杏、はダメか……ぎっくり腰」
「シェイク」
「くま」
「マロンケーキ」
「金魚」
「洋ナシ」
「……静雄さん、お腹すいてます?」
ある昼下がりの午後。
南池袋公園にて、三好と静雄は同じベンチに隣り合って座っていた。
「スイカ」
「え、今の続いてたんですか? えーと……鴨」
「もずく」
「クチナシ」
「シナモン……ロール」
「る、る……うーん、ルビーは言ったしなあ……」
うんうんうなる三好の隣で、静雄は空を見上げる。
(ああ、平和だな……)
後輩とこんな風に普通のなんでもない会話をすることなんてないと思っていた。実際諦めていたし、今もどこか信じられない。
ふと横を見やれば唸りながら未だに考え込んでいる三好。この後輩に友情以上の感情を抱いていることは薄々気づいているが、それ以上は望まない。……望めない。いつか、ほかの奴らと同じように離れて行ってしまうのではないかと、臆病な自分が怯えているから。
「留守番電話! わですよ、静雄さん!」
「わ、か……和菓子」
「シンクロ」
「ロース」
「す、す……」
まあ、この距離でも十分満足ではあるが。こうして静かな公園で二人で話をしていられるだけでも幸せだと思うのは、いささか小さすぎだろうか。
「どうした、三好? 思いつかねえのか?」
「うー……」
煙草を取り出そうとしてポケットを探り、三好がいることを思い出して取り出しかけた煙草の箱をしまう。なんだっけか、フクリュウエン? ってやつで、周りにいる奴の体に悪いらしい。三好が体壊したりしたら大変だからな。
「す、す……すき」
「き、き……………ん?」
今、こいつ何て言った?
首を巡らせれば、少し照れたように頬を赤くしていり三好が、まっすぐ俺の目を見つめていた。
「好き」
頭の中が真っ白になる。
すき? すき。 すき……隙? いや、違うな……すき。好き?
「っ!!」
やけに回転の遅い頭で考え、たどり着いた結論が『好き』という意味。やべえ、顔どころか身体中が熱い。
「あ、あの、えと……」
不安そうな表情でおどおどとする三好に手を伸ばし、両手でそっと頬を包み込む。
「静雄さ……」
「キスしていいか?」
途端に首まで真っ赤になった三好をかわいいと思いつつ、手を振って制止するのを無視してその唇に噛み付くように口付けた。
シロップのきみ
重ね合わせた唇は、シロップみたいに甘かった。