drrr!!

□さびしんぼうとカニ
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「やあおかえり久しぶりだね三好君それはそうとお腹すいてるでしょさあ鍋を食べに行こう!」
「…………」

 久し振りの池袋。
 両親と共に一度は外国に引っ越したが、僕は結局日本に戻って一人暮らしすることにした。
 池袋での生活はたった二ヶ月ほどだったけど、今まで過ごしたどこよりも印象が強く、居心地のよい場所だった。この場所を去ったことが正しかったのか、外国に行った後もずっと考えるくらいには。見兼ねた両親が日本で暮らすことを許してくれた。

 まあ結局、この場所が捨てがたかっただけかもしれないけど。


 そして久方ぶりに帰国し池袋の駅に降り立った僕を迎えたのは、新宿をねじろにしている情報屋の男、折原臨也だった。
「……なんでいるんですか」
 外国へ行く際、携帯電話などは解約してしまい、戻ってきた時のためのアドレスなどのバックアップは母親が誤って洗濯してしまったので日本の友人に連絡する手段がなくなってしまった。その為帰国することは誰にも知らせていない、そのはずだが。
「俺は情報屋だよ? それくらい知ってて当然さ」
 ああそうだこの人そういう人だった。もはや慣れだ。僕はため息一つで済ませることにした。
「……で、なんで急に鍋なんですか? 鍋っていったら普通冬でしょう」
「別に深い意味はないよ?ただ急に食べたくなったんだけど、一人じゃ寂しいじゃない」
「ああ、臨也さん友達いないですもんね」
 臨也がひくりと頬を引きつらせるのが見えたが、涼しい顔でスルーした。
「まあいいや。さ、行こうか三好君」
「え、僕まだ行くなんて一言も……」
 ごねてはみたものの、腕を引かれあれよあれよという間に荷物を奪われタクシーに押し込まれてしまった。
「運転手さん、出しちゃって。行き先は……」
 断る権利はないようだ。僕はもう一度深いため息を吐いた。



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