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□兎と狐と熊さんと
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 少年――三好吉宗は走っていた。
 既に息は上がり、酸欠で苦しい。脇腹も酷く痛み、呼吸をする度にキリキリと痛む。元から肉体派ではない三好にとって、走り続けることは楽ではなく、現に足はもう限界を訴えている。
 それでも三好は止まるわけにはいかなかった。今止まれば恐ろしいことになる。それだけは絶対に避けたかった。


「どうして逃げるのかな、三好君?」


 背後から聞こえた声に、身体中の毛が逆立つ。力の入らない体を叱咤し、スピードを上げようともがいた。
「あははは、頑張るねぇ。いつまでもつかな?」
 ちらりと振り返れば、さっきと変わらぬ距離を開けて走る男の姿。こちらのスピードが落ちているにも関わらず距離が詰まっていないということは、完全に遊ばれている。こちらが力尽きるのを待つつもりだ。
 がむしゃらに逃げ回っていたせいで、三好はすでにここがどこだか分からなくなっていた。それでも足を止めることなく走り続ける。行き止まりに突き当たってしまっては終わりなので、できるだけ広い道を選んで走る。なんとか大通りに出ることができればこっちのものだ。
「もしかして、なんとかして東口の方に出ようとしてる?あはは、やっぱり君って面白いねぇ」
 考えを読まれたことに内心ドキリとするが、見慣れた風景がちらほらと見え始めた。次の道を曲がって真っ直ぐ進めば、大通りに出られる。
「アイツに見つかったら厄介だからなぁ……名残惜しいけど、そろそろ鬼ごっこはお仕舞いにしようか」
 後ろで男が速度を上げたのがわかった。負けじとこちらも最後の力を振り絞って走る。
 角を曲がったその時、向こうから歩いてきた誰かにぶつかって弾かれ、三好はもんどりうって地面に転がった。



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