drrr!!

□コーラとミルクティー
1ページ/2ページ


「静雄さん」


 取り立ての仕事の途中。トムさんと公園で一服しているところ、ふいに背中にかけられた声。
「おう、三好」
 手を振って呼べば、公園の入り口にいた少年――三好吉宗は、パッと顔を輝かせて小走りで寄ってきた。子犬のような反応に頬が緩んだ。
「学校の帰りか?こんなとこで会うなんて珍しいな」
「静雄さんの姿が見えたので」
 やんわりと微笑む三好に、胸がきゅっと締め付けられる。この間会ったときに言ったことを覚えていてくれたのか。
「そ、そうか……喉渇いてねぇか?奢ってやるよ」
「え、いいんですか?」
 目を輝かす後輩に対し、どこか気恥ずかしくなりながらも二人連れ立って公園に設置された自販機に向かう。そういえば前もコーラを奢ってやったことがあったな、と考えていた静雄は、後ろでトムがニヤニヤと二人の後ろ姿を見つめていることには気付かなかった。
「好きなもん買っていいぞ」
「うわぁ、ありがとうございます」
 三好は顎に手を当てて唸っていたが、やがてミルクティーのボタンを押した。
 ガコン、と音がして自販機が白い缶を吐き出した。
「僕、ミルクティー好きなんです」
 暖かい缶を両手で包み、頬に押し当てる。あ、でもコーラも好きですよと三好は笑った。
「俺はあんまりそういうのは飲まねぇな。コーヒーはよく飲むが」
 そんな雑談を交わせることが嬉しい。今まで、まともに話をできる相手は片手の指で足りる程度しかいなかった。特に後輩ができるなんて夢にも思わなかったから、どうにも接し方が分からない。
 それでも、三好と過ごす時間は心地よい。こいつは基本的に無口だからか、話していてイライラすることがない。かといって沈黙が気まずくなることもない。セルティとはまた違う意味で、一緒にいてホッとする相手だ。
「一口、飲んでみます?」
 飲みかけの缶を三好が差し出してきた。せっかくなのでもらっておく。後輩の気遣いを無駄にするわけにいかないしな。
「……甘ぇな」
 三好からもらったミルクティーは思ったより甘ったるく、口の中に残った。
「……でも、割と嫌いじゃねぇ」
 そう呟けば、三好は嬉しそうに笑った。


→後書き&オマケ
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ