【 ポラリスを君と 】
□【5日目の夜:ミントのベールに包まれて】
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少ない荷物をまとめて、次の町へと向かう準備をするあたし達(今回も、何処の町に行くのかは、別に決まってないけれど)。
そんな今日も、相変わらず外は冬景色なわけで…。
宿から一歩でも出れば、きっと、口から白い息が漏れるに違いないだろう。
半バンパイアの力を持っているとはいえ、寒いのが苦手なあたしは、ガブナーから貰った真っ白なコートを、しっかりと羽織(はお)った。
不図(ふと)、あたしは、このコートを見て、“ある日”のことを思い出す。
あたしがバンパニーズ2人組に襲われて、このコートを引き裂かれた、“あの日”のことを―…。
そう言えば、彼等はこのコートに手をかけたことで、あたしが“闇の至宝”だと気付いた気がする。
このコートは、昔、まだガブナーとあたしが出会ったばかりの頃に、彼から貰ったものだ。
「出来れば、常に羽織っててほしい」と、彼から言われたので、あたしは言われた通りに、常に今まで、羽織れる限りに羽織ってきた。
オールシーズン着れるようデザインされたもの[コート]だったから、あたしはコレを、時には紫外線対策用に、時には雨避けに、時には今のように防寒用として、随分と活用されてもらったわけだけど…。
今思えば、彼のその言葉は、どう考えても引っかかる。
勿論、あの時のバンパニーズの反応も…。
もしかしたら、このコートは、ちょっとした秘密道具だったりするのかもしれない…!
ステラ「(うぅん、でも、流石にソレはないか。
どっからどう見ても、ただの真っ白なコートだもの。
あっ、いや、『ただの』じゃないか。
ガブナーから貰った、大切な贈り物だもんね…)」
まぁ、さり気なく聞いてみることにしよう。
話しの内容がコートだなんて、話題としてどうかと思うけど…。
あたしは苦笑して、退屈な、そしてすぐに終わってしまうであろうその話題を、どう切り出そうかと悩んでいた。
【5日目の夜:ミントのベールに包まれて】 ―御召し物は秘密の味がする―
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