【 神様のキャンバス -Fate/Zero- 】
□【プロローグ 〜問おう、貴女が私のマスターか?〜】
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空は何処(どこ)までも青く、広かった。
雲は何処までも白く、自由だった。
風は冷たくて、火照(ほて)っていた体に心地良く、踏みしめた土は、何だか擽(くすぐ)ったい…。
“少女”は、そんな目の前の光景に呆然とした。
彼女の周りは、瓦礫(がれき)の山であり、所々で煙が濛々(もうもう)としている。
パチパチと、何かが燃えているような音さえも聞こえてきた。
ココは、一体何処なんだろう…。
今日は何月何日で、今、何時なんだろう…。
この何もない場所で、何が起きたというのだろう…。
自分以外に、人はいないのだろうか…。
次々と浮かび上がってくる疑問[ソレ]は、この場に居れば、誰だって思うこと。
しかし、その“少女”にとって、“そんなもの”は最早(もはや)どうでも良かった。
彼女は、呆然としていた表情を、見る見るうちに変化させた。
ソレは戸惑い、好奇心、喜び、驚き等、様々な感情が混ざったものだった…。
そんな“少女”は、手始めに歩き出した。
目的は特になかったが、その何処か覚束(おぼつか)ない足取りで歩いた。
次に、何かを見つけたらしく、その瞳を輝かせて走った。
迷いのない走りは、とても速かった。
そして、“少女”は海に辿り着いた。
青々としていながら、透明でとても美しい海に…。
“少女”はソコで太陽も見た。
キラキラと輝くソレは眩しかったが、彼女はその可愛らしい目を逸らすことはなかった。
青い空に、白い雲。
青い海に、黄色い太陽。
茶色の土に、緑の芽。
全てが“少女”を震わせた。
全てが“少女”を虜にした。
全てが“少女”を歓喜させた。
?「………コレが、“外”―…」
何故(なぜ)なら、その“少女”にとって、“外”は憧れであったから。
“無色の世界”で、今まで生きてきた彼女にとって、この世界は幻想であったから…。
?「コレが…“外”、“外”だぁ!
あは…あは、あははは!
コレが“外”―…“外”、“外”!」
自分がいる場所を認識出来た“少女”は、『外』という単語を何度も繰り返し、そして笑った。
直後、その彼女の背景では、何処かの瓦礫の山が崩れ落ちる。
砂煙が少しだけ立ち込まり、ソコに現れたのは―…何処の誰とも分からない者の、赤い血だった。
【プロローグ】 ―勝利の女神に微笑みを―
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