【 ポラリスを君と 】

□【0日目の夜:プロローグ】
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<ドクン、ドクン―…>


心臓の音が聞こえる。

規則正しいリズムは崩される事なく、“今”を刻んでいく。


あぁ、暖かい…。

誰かに優しく包まれているこの感触は、手放したくない程の十分な価値があった…。



?『―――…』



微睡(まどろ)んでいると、誰かの声が聞こえた。

初め小さかったソレは、やがて程良い音量になり、頭の中を曲のように流れていく―…。



?『あーあ、もっとこうすれば良かったのに…』

?『えぇっ!? ココで死んじゃうの!? そんなぁ…』

?『生きて…生きていて欲しかったなぁ…。
  そしてみんな、幸せになれば良いのに…』




ソレ等の声は…望みとなった。

願いとなった。

祈りとなった。

希うモノとなった―…。


ソレ等は“あたし”を包み込んだ。

加えて、見た事もないような数々の風景も頭の中に流れてきた。

あたしは戸惑いと不安からか、声が響いていくその中で、大声を上げて泣いた。


すると、今度は別の声が聞こえた。

ソレは今までで1番安らげる声だった。


その声の主は、あたしを優しく抱き締めてくれた―…。



?『あぁ、生まれてきてくれたのね…。 “希望の子”よ―…』



穏やかな声だった。



?『貴女の存在は、ある者達から見れば“怪奇”なのかもしれない…。
  だけど、“貴女”という存在は、間違いなく“希望”そのものだわ』




まるで、未来[これから]の事を知っているようなその口振りは、何処(どこ)か不思議な魅力があった。

あたしは泣くのを止めて、ただ、その声の主の話を聞いた。



?『だけど、そうなるかならないかも貴女の自由…。 良い? “運命”は…自分で決めるのよ』



声の主は、そうやって難しい話を静かに終えた…。


暖かい包容に、再び微睡(まどろ)んでいくあたし…。

今はただ、その安らぎに身を任せた…。





その後、あたしは成長していき、また、様々なものを身に付けていった。

ソレは、知識だったり、品性だったり、力だったりした。


時折見る不思議な“夢”に首を傾(かし)げながらも、あたしは“まずは”自分の人生を歩んで行った。


この先、何が起こるのか…少しずつ知りながら………。

“覚悟”と“決意”を固めながら―………。



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