黒き書斎

□どうしてそんなに可愛いの!!
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「あー、腹へった」

そう言って、俺の少し前を歩く神崎くん。

あんまり何回も言うもんだから、俺までお腹すいてきちゃった。

「うん、そうだねぇ」

「その辺にコンビニねぇのか」

「無いよ〜、いつも通ってるんだからわかるでしょ?お家まで我慢だよ」

「ちっ…」

「ほらほら、拗ねないで…あれ?」

「誰が拗ねて……あ?」

俺の視線の先には、一台のワゴン車。
見慣れないそれには、可愛らしい字で『クレープハウス』と書いてあった。

「あはは、運がいいね俺たち。俺、甘いもの食べたかったし、買おうかな」

そこまで言って、俺は神崎くんの顔を下から覗き込む。
神崎くんがクレープを食べる姿…想像出来ない。
一呼吸置いて、俺は質問をした。

「神崎くんは、どうする?」

すると、彼はキョトンとした顔をして、

「はぁ?食うに決まってんだろ」

と言った。

「そうだよね、お腹すいてんだもんね」

「ったりめーだ…おい、夏目」

「なぁに?」

「ニヤニヤすんな、気色わりぃ」

おっと不覚。俺としたことが。さっといつものポーカーフェイスに戻って、

「ひどいなぁ。彼女に向かって」

と言ったら、

「誰がだ」

と、頭をこづかれた。





「んーと、俺はこれにする」

特にこれといって食べたいものが無かったので、俺は適当にチョコバナナを選んだ。

「神崎くんはー…」

そう言いかけて、止まる。
だって、あんまりにも一生懸命悩んでいたから。
たかがクレープなのにさ。
そーゆートコが面白いよねぇ。

「………」

「神崎くーん?」

「ーっと…」

「クスッ」

悩みに悩んだ末、彼が選んだものは。

「…………これ」

「ん?どーれ、って…え…」

彼が選んだものは。

「苺、スペシャル…?」

苺や他のベリー系の果物がたくさんのっていて、全体的にピンク色の、そのクレープ。

「……………悪ぃか」

そう言ってふいっと顔を背けてしまう神崎くん。

その耳は真っ赤になっていて。

「〜もうッ、」







どうしてそんなに可愛いの!!







ますます好きになっちゃうじゃない!!
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