星矢

□花の春
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窓を開けると、冷たい空気が漂うが、明るい陽射しが春の予感を告げる。



「沙織。朝だよ」



アフロディーテはベッドに眠る女神に声をかける。



女神―沙織はなかなか起きない。
無理もない。日本でのグラード財団の仕事全てを片付けてから、自家用ジェットに乗ってギリシャ・聖域まで来たのだから、疲れているのだろう。



アフロディーテは沙織に触れた。まだ、沙織は夢の中だ。
どんな夢を見ているのだろう。顔がとても幸せそうだ。
部屋中に薔薇の芳しい香りが漂う。
まるで花と春の女神、フローラが舞い降りたようだ。



「この間まで寒いと思っていたのに、もうあっという間に春が来たんだね」



薔薇の手入れをしている時、小さな双葉を発見した。
小さな命の息吹。
また、二人で過ごす季節が増え、年月を重ねていく。



まるで夢のように温かい。
どうか、永久に二人の時を過ごしたい。



そんな春の始まりだった。

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