星矢

□雨の中の温もり
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せっかくの休日なのに、雨はずっと降っていた。
私はあなたの腕の中に包まれている。



時計の針もそろそろ十時になる。
いい加減起き上がりたいのだけど、私が、体を起こそうとすると、あなたは私をぎゅっと胸元に寄せる。
「アフロディーテ、いい加減起きたいのだけど?」
「構うものか。どうせ、雨なんだし。ゆっくりするのも悪くないだろう」
ベッドの中で二人ゆっくりとくるまる。ベッドの中であなたの腕に絡まれるともう身動きも出来ない。
「肌寒い時は、沙織。君を抱きしめるのが好きなんだよ。沙織、温かい」
アフロディーテは嬉しそうに私の背中を抱く。


「やめて。離して」
「駄目。離さないよ」
甘い声。なのに、なかなか手厳しい。
「どうせ、どこにも行かないのだからさ。このまま、沙織と一緒にいたい」
「アフロディーテ」


確かにアフロディーテの言うとおりだ。傘を差して歩くには足元が濡れてしまう。
それに季節の変わり目の雨だから肌寒くて仕方ない。
だから、あなたの腕に絡まれても、満更でもない。
むしろ、嬉しい。私もあなたの温もりを感じるから…



「でも、ごはん食べ損なっちゃうから」
私は強引にベッドから起き上がった。
「もう起きちゃうのかい?」
「もう10時よ。私が、ブランチ、作ってあげるから」
幼い子どもを宥める母親のような口調で、アフロディーテに言う。
「その後、君を戴くからね」
「まあ」



雨の休日。
二人の温もりで温かくなる。
このまま私を包み込んで…

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