睦月

□Die Konversation vom ersten Tag
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僕は、一生分の羞恥を使い切った気がします。



「うっ………ひ、ひどいっ……!」

「だ、だって、サイズはかんないと……。
で、でもさっ!可愛かったよ!」



フォローのつもりなのかな………。
それとも僕を辱めてるのかな………。
すっごく心に刺さってる。
あぁ、いたい…………………。



「そ、そうだっ!
なんか買いたいものない?
お金は貰ってるし、大丈夫だよ!」

「ぅ………な、なら…………」











「楽器……?」



不足してたモノを補充しなきゃ。
クリーニングペーパーなんか、もう残りが1枚しかないから。
買いに行こう、買いに行こうとか思いつつ忘れる……というか、暇がない。
楽団の練習もあるし、吹奏楽部の後輩達を指導しに学校にも行かなきゃいけないし。
時間に余裕が、なかった。
でも、こっちじゃ楽団なんてないし、指導とかも関係ないから自分のに集中できるし、買う暇も十二分にある。

古くなって締まりが悪いリガチャーも替えたいし、スタンドも欲しい。
スタンドは、今までタオルで代用してたけど、買えるなら買った方が、楽器にはいい。
いつまでいるか解らないのにリードなんかは多く買えないのがイタい。
通常1箱に2〜3コいいのがあるかないか。
だから4〜5箱は買うものだけど。



「リガチャーとリード3箱下さい」

「失礼ですが、メーカーは?」

「クランポンのR-13です」

「R-13ですか……吹き難くありませんか?」

「いえ、もう使い慣れてますし、R-13の方が、音色が綺麗ですから」



中学生でクランポンクラリネットのR-13を使う人は少ないと思う。
音や音程のコントロールが難しいし、上級者向けのクランポンR-13は、ほぼ初心者の中学生ではきつい。
ヤマハYCL-650あたりが妥当。

やるならいいものを使いなさい、それが母さんと父さんの教えだから、小学生のころからクランポンR-13だった。
はじめは吹きにくくて嫌になったけど、慣れると綺麗な音色になる。



「……暫くお待ち下さい」





なんだろう、この人の。

この、ちょっと嫌なかんじ…………――











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