睦月
□Die Konversation vom ersten Tag
2ページ/3ページ
僕は、一生分の羞恥を使い切った気がします。
「うっ………ひ、ひどいっ……!」
「だ、だって、サイズはかんないと……。
で、でもさっ!可愛かったよ!」
フォローのつもりなのかな………。
それとも僕を辱めてるのかな………。
すっごく心に刺さってる。
あぁ、いたい…………………。
「そ、そうだっ!
なんか買いたいものない?
お金は貰ってるし、大丈夫だよ!」
「ぅ………な、なら…………」
「楽器……?」
不足してたモノを補充しなきゃ。
クリーニングペーパーなんか、もう残りが1枚しかないから。
買いに行こう、買いに行こうとか思いつつ忘れる……というか、暇がない。
楽団の練習もあるし、吹奏楽部の後輩達を指導しに学校にも行かなきゃいけないし。
時間に余裕が、なかった。
でも、こっちじゃ楽団なんてないし、指導とかも関係ないから自分のに集中できるし、買う暇も十二分にある。
古くなって締まりが悪いリガチャーも替えたいし、スタンドも欲しい。
スタンドは、今までタオルで代用してたけど、買えるなら買った方が、楽器にはいい。
いつまでいるか解らないのにリードなんかは多く買えないのがイタい。
通常1箱に2〜3コいいのがあるかないか。
だから4〜5箱は買うものだけど。
「リガチャーとリード3箱下さい」
「失礼ですが、メーカーは?」
「クランポンのR-13です」
「R-13ですか……吹き難くありませんか?」
「いえ、もう使い慣れてますし、R-13の方が、音色が綺麗ですから」
中学生でクランポンクラリネットのR-13を使う人は少ないと思う。
音や音程のコントロールが難しいし、上級者向けのクランポンR-13は、ほぼ初心者の中学生ではきつい。
ヤマハYCL-650あたりが妥当。
やるならいいものを使いなさい、それが母さんと父さんの教えだから、小学生のころからクランポンR-13だった。
はじめは吹きにくくて嫌になったけど、慣れると綺麗な音色になる。
「……暫くお待ち下さい」
なんだろう、この人の。
この、ちょっと嫌なかんじ…………――
.