main小説 加賀家の末っ子

□1 今日から高校生
1ページ/60ページ

鏡の中の自分と目が合う。

春休み中に伸びた黒髪と視力0.01の為の分厚い黒縁眼鏡の自分と。

真新しい高校の制服は、ちょっと大きめ。
今は158センチだけど、これから成長期だもんね!
中学校では学ランで、ブレザーに憧れてたんだよね。なんか、大人っぽいじゃん?ネクタイ!
…その、ネクタイは出来ないけど。

うーん…。おかしいな。この制服すごくかっこいい筈なんだけど?
鏡の中の自分はかなりダサい!

「みーちゃん、準備出来たか?」
ノックもなしに開いたドアからは、にいちゃんが。
背が高い為、頭をぶつけないように下げながら入ってきた。
標準以下の自分に対するイヤミじゃね?っていつも思う!
「なんだ、まだ準備出来てないのか」
って言いながら、俺の背後に回りそのままネクタイに手を伸ばした。
結構密着していて窮屈なんですけど?
「あの…大変有り難いですが、普通は前からじゃないの?」
「うーん?自分目線じゃなきゃやりにくいんだよね」
ふーん?って思いながら、ネクタイは任せて鏡の中のにいちゃんを見ていた。
(あれか、モデルが良かったからだな。同じ制服なんだけど、にいちゃん190センチ近く引き締まった身体で、勿論足なんか俺の腰位だし、しかも!所謂イケメンだ。俺とはまったく違うね)
いつの間にかネクタイを締め終え、俺の頭に顎を乗せてる、鏡の中のにいちゃんと目が合う。
「何?かっこいいお兄さんに見とれちゃった?」
なんてニヤニヤ。
かっこいいって思っていたけど、“かっこいい”なんて言ってあげないもんね!
「じゃあ、そろそろ行こうか」
そう言って俺の頭をポンポンって。
「今日から高校生なのに、子ども扱いして!」
一個しか違わないのに。…身長はさ、かなり違うけど。
「ネクタイも出来ないお子ちゃまのくせに?」
って、意地悪い顔で。だからちょっとムキになって「練習するもん!」 ってぷりぷり。
そうしたら、かっこいい顔をニヤニヤさせて
「ま、俺が締めてやるよ。同じ高校だしな?体育の後は俺の所まで来いよ。やってやるから」
なんて言って!俺が不器用なのはにいちゃんのせいもあると思うよ!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ