ZS小説

□星の瞬きと
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 幼い頃、空を見上げると、瞬く星があまりにも綺麗で、何だか心がホッとするような、それでいてわくわくと騒ぎ出すような、そんな感覚があった。
 海上レストランで働いていたときも、夜になれば瞬く星を見上げて、フッと息をつけば、それすらもまた、心躍らせる一つになった。
 今、ここでもそうだ。
 見張り台の上から見る星も瞬いていて、ざわめくと言うか、はしゃぐ気持ちに似ている、その高揚感。
 肌寒さを感じる気候に背を押され、キッチンから持ってきていたワインのコルクを抜く。
 コルクに染み付いたワインの香りを楽しみ、グラスにワインを注ぐ。
 血を思わせるような濃い赫をグラスの中で揺らめかせ、月明かりに透かすように高く掲げ、優しく口づけるようにグラスの淵を唇にあて、傾けると、喉の奥をさらさらとワインが流れていく。

「恋の味・・・なんてな」

 口端に笑みを浮かべ、もう一度グラスを口に運ぶと、そこへ現れたのは、ムードを知らない野獣。

「何だ、一人で晩酌か?」

 そう言った男は、足元にあるワインの瓶を手に取ると、無遠慮にそれを口に運ぶ。
 ごくごくと品のない音を立て、口端から一筋の赤い線をつくり、今までのしっとりとした雰囲気をぶち壊した。

「っっっ、てめえは、人がせっかくいい気分で飲んでたってのに、バカ野郎が」

 そう言ってサンジは自慢の蹴りをゾロの頭に叩きこむと、ワインの瓶を奪い取る。
 頭を押さえながら口を拭い、ゾロはサンジを睨みつける。
 けれど、サンジはそっぽを向いていて、ゾロに目を向けようともしない。
 そんな姿に少しムッとしながらも、後ろからそっと近づけば、ピクンと跳ねる肩が愛しいだとか、手を伸ばせば少し身体を固くするところが何とも言えないほど可愛いだとか、言葉にしたら絶対に怒りだしそうな想いを飲み込んで、ゾロはそっと背中からサンジを抱きしめた。

「おい」
「ん?」
「俺は怒ってるんだぞ」
「分かってる」
「言うことないのかよ」
「ん?」
「一言あるだろ、俺に」

 むすくれるサンジを少し強めに抱きしめれば、答えはもう言わなくても分かっている。
 それでも、サンジが欲しい言葉ではない言葉を耳元でささやけば、耳まで赤くしてサンジが更に怒る。
 腕の中でじたばた暴れるサンジを抱きしめ直して、もういちど囁く。
 そうすれば、観念したかのように肩を落としてため息を吐く。

「ゾロ」
「ん」
「もう一回」

 そう強請られては言わないわけにはいかない。
 だから、同じ言葉でも、何度でもゾロは言う。

「好きだ」

 本音を耳元で、ずっと、ずっと・・・

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