ZS小説
□夕闇のcomposition
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十日ぶりに陸に降りた足は、地面の懐かしさを味わうように弾んでいた。
「この街にはきっと素敵なレディがいるに違いない!」
目をハート型にさせながら、サンジが船を下りて行って二時間ほど経ったときだった。
甲板の上で相変わらず昼寝をしていたゾロが目を覚ますと、船には誰ひとりいなかった。
各々役割を持っているのだ、自分に必要なものを買いに出かけたのだろう。
ルフィあたりは荷物持ちに丁度いいと連れていかれたか、もしくは真っ先に飯屋に向かって一人で走りだしていったのだろう。
この船にゾロ一人だけがぽつんと座っている。
そのことについて、ゾロが何かを気にしたりはしないが、それを気にする者が約一名。
「お、なんだ、起きてたのか」
そう言って声を掛けてきたのは、買い物袋を抱えたサンジだった。
久しぶりの島に、浮かれて出ていったような記憶がぼんやりと残っていたゾロは、目を瞬かせてサンジをじっと見つめた。
「人の顔をじっと見て、なんだ、言いたいことがあるなら言え」
ため息交じりにそういうサンジに、ゾロは口を開きかけてやめる。
ここで何か言っても、結局喧嘩になるような気がしたからだ。
今この船にはゾロとサンジの二人だけしかいない。
その事実が、ゾロを動かしたのか、それともただ単に気まぐれなのかはわからないけれど、ゾロは立ち上がるとサンジに近づき触れるだけのキスをした。
驚いたサンジが持っていた荷物を取り落としそうになるのをゾロが支えると、サンジは顔を真っ赤にしてその場にへたり込んでしまった。
「なんで?」
真っ赤な顔をしたサンジが焦点の合わない目でゾロを見上げて言う。
ゾロは乱暴に頭を掻いて「あーーー」と意味深なため息にも似た声を漏らした後、まるで飢えた獣のようなギラついた目をサンジに向けて、口元を手で覆った。
「寝る」
そう言ってゾロはその場を去っていこうとしたが、それをサンジは許さなかった。
「待てよ、いきなり人にキスなんてしておいて、居なくなる気か」
「いなくなるって・・・部屋で寝るだけだ」
「そう言うこと言ってんじゃねえよ。これ、どうしてくれんだって言ってんだよ!」
そう言ってサンジが指さした方へ視線をやると、ズボンを押し上げている膨らみに気付く。
先ほどのキスで、サンジはキてしまったようだ。
ゾロもまた、それを見て自身の昂ぶりが増していくのがわかる。
舌打ちをしながら頭を掻いた後、ゾロはサンジの腕を掴んで立たせると、ぐいぐいと引っ張って部屋へ連れていった。
この船には二人きり。
誰の邪魔もされずに二人だけの時間が過ごせる。