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□水色al dente
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水色al dente(すいしょくアルデンテ)



「俺は好きだぞ」


 そう言ったこの船の船長の目は真剣だった。
 その瞳に宿る己の意志の強さは、敵を目の前にした時よりも、ずっと深く強烈で、心臓を鷲掴みにされた。
 なぜそんな言葉を聞くことになったのかといえば、時を遡る事半日前――



「ナミさん、ロビンちゃん。今日のおやつは甘さ控えめのビターチョコレートケーキだよ〜。茶色い生地に生える色とりどりの果物をふんだんに使った、クール且つスウィートな味わいをご堪能あれ」
「ありがとう、サンジ君」


 女神たちにおやつのケーキを運んだあと、野郎どもにも同じ(多少見栄え的には異なるが)ケーキを与えた。
 その時だ、やっぱりその場にいない奴が一人・・・
 ムカつくほど俺の声が聞こえてても姿を見せやしない。
 わざわざ探して届けてやる理由もないが、あいつのために作ったものを、あの食いしん坊どもに食われるのは気に入らねぇ。
 そして俺は切り分けたケーキをトレイに乗せて、船尾へ向かう。
 いるとわかってても、本当にいると心なしかムカつきが増す。


「この野郎、俺が呼んでるって分かっててもグーすか寝コケやがって・・・」


 いつも通り、船尾で昼寝をしているゾロにつま先で軽く蹴りを入れる。


「おい、呼んでんだろうが。さっさと起きろ」
「いてっ・・・んあ、なんだ、飯か?」


 この態度だ。
 腹も立つ。


「飯の前のおやつだよ。ほれ!」
「お、わりィな」
「ったく、呼んだらその時に来い。あの食いしん坊どもに取られて食いっぱぐれると後で文句言いやがるんだから、ちったあ気を使え」


 ゾロの隣に座って空を見上げると、雲ひとつない快晴。
 ガツガツと俺の作ったケーキを頬張るゾロを横目に見ると、無性に抱きたくなった。
 唇を奪い、口内を犯して、胸の突起を弄り回して、嫌がるゾロをひん剥いて、ゆるく起ちあがっているそれを咥えたら、きっと顔を真っ赤にして俺の頭を掴んでくるんだろう。
 隣でそんなことを考えているだなんて、きっとゾロは想いもしないだろう。
 俺は下半身が意志をもつ前に立ちあがってゾロから離れることにした。


「食い終わったら皿はちゃんとキッチンに持ってこいよ。その場に置き去りになんてしたら三枚に卸すぞ」


 そう言って船尾から離れると、そのままキッチンにはいった。
 女神たちに出した皿がキッチンに置かれていたのを見て、皿洗いを始めると、無意識にため息が零れる。


「…俺のこと好きになってくれねぇかな」


 想いがそのまま口をつくなんてこと、今までに一度だってなかった。
 その人生でたった一度の想いを口にしたところを、よりにもよって、まさかあんな間抜けに聞かれるなんて・・・
 それこそ思いもよらなかった。


「俺は好きだぞ」


 振り返ると、俺をじっと見つめるルフィの姿があった。
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