ZS小説

□青海のconcerto
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青海のconcerto(コンチェルト)



甲板でいつもと同じように昼寝をしているゾロに、俺は触れるだけのキスをした。
眠っているゾロが気づくはずはないし、おやつに夢中のルフィたち男どもや、船の中にいるナミさんたちが見てるわけでもない。
この船でゾロと二人きりで誰にも見られない、邪魔されないでこんなことができるのは、この時間しかない。
俺ははち切れんばかりに心臓を鳴らしながら、もう一度ゾロの唇に自分の唇を触れさせた。
すぐに離れるつもりだったのに、それをさせなかったのはゾロのほうだった。


「ん! んんっ!」


怒鳴ろうと口を開くと、さらに深く口づけられる。
息もままならない状態で、ゾロの激しい口づけを受けていた俺だが、こちらに向かってくる人の気配を感じて、思い切りゾロを突き飛ばした。


――ガンっ


大きな音が何を意味していたのか、ゾロが頭を押さえている姿が目に入ったその瞬間。


「おう、コックの兄ちゃんよう、麦わらがおかわり寄越せってうるせぇんだ、何とかして・・・どうしたんだ?」


頭をさすっているゾロを見たフランキーが心配そうに首を傾げた。


「なんでもねぇ」
「そうか? でよ、コックの兄ちゃん」


フランキーに話を振られ、俺はゾロから視線をそらす。
ルフィの騒ぎっぷりは想像できたし、ウソップが一番被害を受けていることも予想の範囲だった。
俺はフランキーと一緒にキッチンへ戻る。
俺の後ろからは何の声もかからない。
それが少し、ほんの少しだけ寂しと感じたのは、まだ胸の奥に隠しておく。
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