ZS小説
□紺海のagitto
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目が覚めるとそこは見覚えのある場所だった。
「俺、確かあのまま寝ちまったような・・・」
意識がはっきりしないまま、昨夜のことを思い出そうとした時、俺は聞き覚えのある声に我が耳を疑った。
「おいおい、マジかよ、俺を騙そうってんじゃないだろうな」
耳を澄ましているうちに部屋のドアが開き、そこに姿を現したのは、海上レストランバラティエで一緒に働いていたパティとカルネだった。
サニー号にいるはずがない二人がいる状況に、俺の思考は停止した。
そんな俺にパティが相変わらずでかい声でうるさく喚く。
「サンジ、テメェがなんでここにいる」
「は?」
「そうだぞ、おめぇ麦わらと一緒にここを出たじゃねぇか」
カルネもまた、訳のわからないことを言いだす。
ガシガシと頭を掻いて、わからない状況を整理しようと目を瞑る。
すると、そこへ聞こえてきたのは、あの男の声だった。
「なにやってんだ、二人して。そこはサンジの部屋だぞ」
声に顔を上げると、そこにはクソジジイが立っていた。
目が合うと、ジジイは大きくため息をついて俺を見つめた。
「サンジ、おめぇ、旅に疲れちまったのか」
「え?」
「休みたくなったんだろ」
「なん、で?」
「お前がここにいるってことは、心が疲れてる時だ」
心が疲れている。
そう言われて、前にも一度、こんなことがあったことを思い出した。
あの時はアラバスタで激戦したあと、裏町で皆で気を失った時だ。
目が覚めるとそこはバラティエの自室で、ジジイが俺のベッドの上で写真を見ていた。
「サンジ、お前・・・」
何か言いかけて、ジジイはふっと息を吐いていつもの顔になる。
「さっさと帰れ、仲間のところへな」
言われて俺はすっと目を閉じた。
持っていた煙草に火をつけて紫煙を吐き出しながら、ジジイを見つめる。
「いってくらぁ」
そのまま意識はまた深く落ちていく。
落ちていく意識の中、ジジイが何か言った気がしたけれど、それは俺には聞こえない言葉だった。