ZS小説

□青海のconcerto
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コックの背中を見送ると、不意に蘇ってきたのは初々しく俺にキスをしたコックの顔だった。
この時間、いつも俺が寝ていると思ってそうしているのだろう。
初めてされたのはいつだったかなんて覚えてはいないが、それでも、数え切れないほど、あいつのたどたどしいキスを受けた。
今日は二回もしてきたと思った瞬間、俺の中で何かがはじけ飛んだ。
貪る様にコックの唇を塞ぎ、驚いたコックのことなんて見もしないで唇を奪った。
突き飛ばされたことが、少なからずショックであったことは確かだが、俺自身は本当にあいつをどう思っているのかわからない。
けど、あの後ろ姿を見ていたら、腹の奥で何かが痛むのを感じていた。
なんて声をかけていいかなんてわかるわけなくて、俺はただ見送るしかできなかった。
唇に残るあいつの感触を確かめるように、指で自分の唇をなぞる。


「なんなんだよ、一体・・・」


もやもやする気持ちに蓋をして、俺はキッチンに向かった。
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