*二次小説*

□君の知らない物語。
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撫子的にはやっぱり、暦おにいちゃんはかっこいいと思うし、それに惹かれてる女性が多いのもまた事実で、惜しむらくは暦おにいちゃん自身がそれを自覚していないということです。

自覚して、くれていない、ということです。

吸血鬼には異性を虜にする魅力とか力があるというけれど、撫子はそんなものなくたって、ううんそんなものないときから暦おにいちゃんが大好きだった。

ずっとずっと、大好きだった。
今でも、ですけど。

「撫子ちゃんは本当可愛いよね!」

いつの日か、月火ちゃんはこんなことを言っていました。
臆病で、引っ込み思案で、挙動不審で、根暗な撫子のことを可愛い、と。

「そ、そんなこと、ないよ…撫子は、可愛くなんか…」

「えーなに言ってんの撫子ちゃん!撫子ちゃんは超可愛いじゃん!愛す可しと書いて可愛いじゃん!」

おにいちゃんが撫子ちゃんに執心する気持ちもわかるよ!と、とびきりの笑顔で、言われました。

執心。
執心?

暦おにいちゃんが、撫子に?

「よかったの。たまたま可愛くて」

とある吸血鬼さんにも、こんなことを言われました。
たまたま可愛くて、よかった。

たまたま、
可愛かったから、
暦おにいちゃんは、
撫子に、

「…そんっなこと、ないよ…」

容姿が淡麗だったから、執心してくれていた?
撫子がたまたま可愛かったから、暦おにいちゃんは――

「ふん。可愛いだけの奴なんぞ……我が身が可愛いだけの奴なんぞ、儂が相手にしてやる価値もないわ」

吸血鬼さんはそう言います。
冷たい瞳で、冷たい声で、そう言います。

「…だって」

可愛い可愛い千石撫子は、意味不明に滅茶苦茶に、叫びます。

「撫子だって、暦おにいちゃんが大好きなのに!」

そしてラブコメの時間です。
一人の少女が抱いた恋心は、無残な形で描かれます。

蛇のように鋭い撫子の心の猛毒が、大好きな暦おにいちゃんの体をめぐります。

「―――暦おにいちゃんなんて、大嫌いだよ!」








君の知らない物語。
どうしてこんなことに――なってしまったのでしょうか。

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