*二次小説*
□君の知らない物語。
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何をどうしたって私は幸せになれないんだなぁ、とか。そんな自虐的でマイナス思考なことを考えながらも日曜の田舎道を散歩します。
何をどうしたって、というのは、つまるところを言うとどうしようもないことで、そのどうしようもなさをどうにかしようとしても無駄ということに気付いてしまえばそこで私の場合は終わり。
物分かりがいい、というのは、時に自分を苦しめる。
もしも私がどうにもならないようなおつむの足りない子だったら、それでもその無理難題を無理して解こうと奮闘できるのだろうけれど―――残念ながら私、羽川翼にはそんなこと、できない。
大好きな人の幸せを願う。
それが最善だと理解してしまっている私は――物分かってしまっている私は、私にはもう、できることはなにもない。
何をどうしたって。
何を、どうこうしたって。
「……なんでもは、知らないわよ」
誰に言うわけでもないけれど、それでもその言葉を、その台詞を――その、言い訳を呟かずにはいられなかった。
「知ってることだけ」
例えば、君の気持ちとか。
君が私をどう思っていたのかとか、わからなかった。
知らなかった。
「……知ってることさえ、知らない」
でも今はもう、違うのだから。君の気持ちも、君が私のことをどう思っているのかも、君が誰を思っているのかも、知っているのだから。
私はただの恩人かもしれない。
ただの恩人で、ただの命の恩人で、それ以上の存在にはなれなくて。
でも。
それでも―――だけれど。
「……もしも私に、ありったけの‘勇気’があったらなぁ」
そしたら何か、変わったのだろうか。
変えられたのだろうか。
君の隣で笑っていたのは、彼女じゃなくて、私―――だったのだろうか。
そうして私は姿をくらます。
逃げるように、姿をくらます。
まるで猫が自分の死体を見せたがらずにそっと消えるように、肉球もないのに音も立てず、誰にも悟られずに。
「羽川!」
「……?あ、阿良々木くん……」
声をかけられ振り向けば、そこにはなにやらシリアスそうな顔をした、クラスメイトが――いえ。
そんな他人行儀はやめよう。
シリアスそうな顔をした――思い人が。
汗をかきながら、こちらに走ってくるではありませんか。
「どうしたの?そんなに急いで……」
「い、いや……なんか、八九寺と話してて、別れたところでお前見かけてさ……なんか、どっか行っちゃいそうな気がして……」
「なにそれ」
「ぼ、僕にもわかんないけど……羽川が行っちゃう!って思って」
「……ふ。大丈夫、私はどこにもいかないよ。だってまだ、卒業式にも出てないんだもの」
「そ、そうだよな……うん。よかった……」
「どうして?」
「え?」
「どうして、よかったの?」
自分でもよくわからないような質問です。
返ってくる答えは、わかっているのに。
恩人だから。
ただの、恩人だから。
「そんなの、決まってんだろ」
彼は――阿良々木くんは、照れたように笑います。
女の子なら誰しもときめいてしまうような、笑みです。
「お前が大切だからに決まってんだろうが」
気もの知らない物語
これ以上好きにさせないでよ。