*二次小説*
□君の知らない物語。
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私と阿良々木先輩の関係を一言で簡単に言ってしまえばまあ、それで全てが終わってしまうのだけれど、あえて表すとしたら、恋敵、というやつだ。
恋敵。
こいがたき。
恋の、敵。
そんなことを言うと誰しもが首を傾げるのだが、それはまあ何故かと言うと阿良々木先輩が男で私が女だからだ。
成り行き上男と女は恋敵になりにくいはずなのだが、私が好意を抱く相手は他ならぬ女性である戦場ヶ原先輩なのだ。
うん。
正直に言おう。私は百合なのだ。
「薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ」
これはいつの日か私の母親が私に言って聞かせた言葉だ。
昔から優柔不断なきらいがあった私は、なんというか…どっちつがずな選択や思考が多かった。
薬でもなく、毒でもなく。
戦場ヶ原先輩は好きだが、かといって阿良々木先輩から奪い取ることはせず……いや。
そんなことできないのなんて、わかっているのだけれど。
わかっているのに諦めきれなくて、いつまでも執着して。
「あ、阿良々木せんぱ……」
ふと、ジョギング中に阿良々木を見かけて声をかけようと…した。
だけどその横には戦場ヶ原先輩もぴったりとくっつくようにして歩いていて、どうにも声がかけずらかった。
なんというか。
邪魔者、になるだろうと思って。
「……薬になれなきゃ、毒」
そうでないと、ただの水。透明で透き通っていて存在があやふやな、水になってしまう。
「………」
私はぐっとこみあげる衝動を抑えて、二人とは別の方向に歩きだした。
あの二人の仲を壊すなんてしたくないし、私はいくら恋敵といえど阿良々木先輩が大好きだ。戦場ヶ原先輩も勿論大好きだし、その二人が幸せになってくれるのは良きことだと思う。
あの二人のなかに邪魔が入るのは、それこそ野暮ったいことだ。
だから私は水になる。
薬になれない神原駿河は、毒にもならずに水になる。
「……これで、いいんだ」
あたかも全員ハッピーエンドなように描かれた物語に取り残された少女は、暗い思いを背負って歩みだす。
自分の道へと歩みだす。
「おーい、神原!」
と。
ふと、背中にそんな声が聞こえた。
「やっぱり神原じゃん。あっ、そうだ。これから図書館で勉強会するんだ。羽川も誘って。お前も来ないか?」
学年は違うけど、最強の家庭教師二人にしっかり教えてもらえるぜ?と、阿良々木先輩。
その横で戦場ヶ原先輩は「ふん」と笑って私を見る。
「神原、図書館でいやらしいことは禁止よ。阿良々木くんなら日経300円でレンタルしてあげるから、我慢しなさいな」
「僕のことを売るのかお前!しかも300円!?安過ぎるだろうが!」
「うるさいわねえ。黙らないとあなたの妹さんたちを…」
「ひ、卑怯だぞ戦場ヶ原!火憐ちゃんと月火ちゃんは関係ないだろうが!」
「……………」
いつも通りの会話に、一瞬虚を突かれる。
拍子抜け、といった感じだ。
「私も…」
「え?」
「私も、行っていいのか?」
すると二人はあきれたように笑った。
笑って、戦場ヶ原先輩は言った。
「当たり前じゃないの。私の可愛い後輩なんだから」
私と阿良々木先輩の関係を一言で簡単に言ってしまえばまあ、それで全てが終わってしまうのだけれど、あえて表すとしたら、恋敵、というやつだ。
恋敵。
こいがたき。
恋の、敵。
そんなことを言うと誰しもが首を傾げるのだが、それはまあ何故かと言うと阿良々木先輩が男で私が女だからだ。
成り行き上男と女は恋敵になりにくいはずなのだが、私が好意を抱く相手は他ならぬ女性である戦場ヶ原先輩なのだ。
うん。
正直に言おう。私は百合なのだ。
「薬になれなきゃ毒になれ。でなきゃあんたはただの水だ」
これはいつの日か私の母親が私に言って聞かせた言葉だ。
昔から優柔不断なきらいがあった私は、なんというか…どっちつがずな選択や思考が多かった。
薬でもなく、毒でもなく。
戦場ヶ原先輩は好きだが、かといって阿良々木先輩から奪い取ることはせず……いや。
そんなことできないのなんて、わかっているのだけれど。
わかっているのに諦めきれなくて、いつまでも執着して。
「あ、阿良々木せんぱ……」
ふと、ジョギング中に阿良々木を見かけて声をかけようと…した。
だけどその横には戦場ヶ原先輩もぴったりとくっつくようにして歩いていて、どうにも声がかけずらかった。
なんというか。
邪魔者、になるだろうと思って。
「……薬になれなきゃ、毒」
そうでないと、ただの水。透明で透き通っていて存在があやふやな、水になってしまう。
「………」
私はぐっとこみあげる衝動を抑えて、二人とは別の方向に歩きだした。
あの二人の仲を壊すなんてしたくないし、私はいくら恋敵といえど阿良々木先輩が大好きだ。戦場ヶ原先輩も勿論大好きだし、その二人が幸せになってくれるのは良きことだと思う。
あの二人のなかに邪魔が入るのは、それこそ野暮ったいことだ。
だから私は水になる。
薬になれない神原駿河は、毒にもならずに水になる。
「……これで、いいんだ」
あたかも全員ハッピーエンドなように描かれた物語に取り残された少女は、暗い思いを背負って歩みだす。
自分の道へと歩みだす。
「おーい、神原!」
と。
ふと、背中にそんな声が聞こえた。
「やっぱり神原じゃん。あっ、そうだ。これから図書館で勉強会するんだ。羽川も誘って。お前も来ないか?」
学年は違うけど、最強の家庭教師二人にしっかり教えてもらえるぜ?と、阿良々木先輩。
その横で戦場ヶ原先輩は「ふん」と笑って私を見る。
「神原、図書館でいやらしいことは禁止よ。阿良々木くんなら日経300円でレンタルしてあげるから、我慢しなさいな」
「僕のことを売るのかお前!しかも300円!?安過ぎるだろうが!」
「うるさいわねえ。黙らないとあなたの妹さんたちを…」
「ひ、卑怯だぞ戦場ヶ原!火憐ちゃんと月火ちゃんは関係ないだろうが!」
「……………」
いつも通りの会話に、一瞬虚を突かれる。
拍子抜け、といった感じだ。
「私も…」
「え?」
「私も、行っていいのか?」
すると二人はあきれたように笑った。
笑って、戦場ヶ原先輩は言った。
「当たり前じゃないの。私の可愛い後輩なんだから」
君の知らない物語。
水は水でも、薬を飲むときに使われる水、なんて。