Don't Look Back
□傷つくことを嫌う動物
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傷
翌日、事はそんなに都合良くいかない事を理解した。
丸「お前、ふざけんなよ」
ガッ!!
『…っ!!!!』
部室に入った途端、丸井先輩に蹴られた。
勢いよく飛ばされた私は立てずにいて、先輩達はそれをいいことに私を次々に蹴った。
『…っ、ゴホッ!!』
生「何故、昨日サボったのですか?」
ジャ「花音が大変だったんだぜ」
真「部活をサボるなど、たるんどるにも程がある!!」
ガッ!!
『…っ、』
先輩達は容赦なく私を蹴り付けてくる。
先輩達のこんな表情、今まで見たことがなくて、そんな表情をさせてしまっていることに強い罪悪感を感じた。
このことを幸村部長達に言ったら、きっと「万南がそんなことを感じる必要はない」って言ってくれるんだろうな。
…暴力が始まっておよそ10分。
こんなことを考える余裕も無くなってきた。
意識が飛びそうになったけど、ふと赤也の表情が見えて、思考がはっきりと戻った。
切「………っ、」
嘲笑うでもない、心配するでもない。
赤也はただ、悲しく、泣きそうな表情をしていた。
この表情が、何を表しているのかは分からない。
それを考える余裕も、今の私は持ち合わせていなかった。
何も面白い反応をせずに、ひたすら暴力に耐える私に痺れを切らしたのか、丸井先輩がロッカーから箒を取り出した。
丸「コイツは、これくらい痛め付けてやったほうがいいんだよ」
『…っ、』
先輩は箒を頭上に構えた。
他の先輩達も、ニヤニヤとその様子を見ている。
赤也は、フと目を反らした。
誰も、助けてくれない。
もうダメだと目をつむった、その時。
「もう、やめんしゃい」
タイミングよく部室に入ってきたのは、仁王先輩だった。
丸「…仁王、何で止めたんだよ」
仁「いい加減にしんしゃい。おまんら、やりすぎぜよ」
真「仁王、俺達のやり方にケチをつけるのか?」
仁「ケチじゃなか。これは制裁でも何でもない、ただの暴力じゃ」
仁王先輩は私の前にしゃがみ、「すまん、もっと早く来とれば…」と、申し訳なさそうに謝った。
生「仁王くんは、花音さんが虐められて、悔しく無いのですか?」
丸「そーだよ!!コイツの味方する意味がわかんねぇ」
仁「…万南は花音を虐めてない。それを知っとる俺が味方するんは当然のことじゃき」
『仁王、先輩…』
仁「おまんらは、今まで一体万南の何を見てきたんじゃ?中1の時から献身的に俺らを支えてくれたんは、コイツじゃ」
「「「…………」」」
仁「万南は、誰よりもテニス部のことを考えとった。誰よりも俺達が傷つくことを嫌った。そんな万南が、仲間を傷つけるはずがなか。…そう思わんか?」
「「「……………」」」
仁王先輩の言葉に、皆黙ってしまった。
仁「何か言わんかっ!!!!」
いつもは声を張り上げるなんて滅多にしない仁王先輩が叫んだ。
そのことに皆驚き、息を呑んだ。
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