Don't Look Back

せが少しでも
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私は今日、学校を休んで昼から病院に来ていた。


その理由は、身体に若干の違和感を感じたから。




私は、幼い頃から軽い心臓病を患っている。



“心臓病”と聞いたら大層な病気に聞こえるが、実際は日常生活に支障はない。


ただ、たまに調子が悪くなって呼吸困難になってしまうことがあるくらい。



今朝、家を出る直前に軽い呼吸困難になったため、大事をとって休んだのだ。






「うーん…少し不安定になってるな。ま、この程度だと心配は無いだろう」

『本当ですか?よかった』

「ああ。…ただ、私は君のその身体中の傷の方が気になる」

『………』

「…言いたくないのなら追求はしないが…無理だけはするんじゃないぞ。自分の体調は自分にしか分からないんだからな」

『はい。わかってます』



主治医の増井先生は、ふぅとため息を吐いた。



「一応心臓の薬と、傷の塗り薬を出しておくから、何かあったら、すぐに相談するんだぞ」

『はい、ありがとうございます』





待ち時間が長かったせいか、増井先生に礼をして診察室を出ると、もう夕方になっていた。



テニス部は、練習の真っ最中だろう。




…あんなことがあったのに、一番に考えるのはテニス部のこと。


自分がどれだけテニス部という存在に支えられていたか、嫌でも理解した。






「…あれ、もしかして…」



待合室に移動しようとしたら、いきなり後ろから聞き慣れた声がした。


振り向くと、馴染み深い人物が不思議そうにこちらを見ていた。




「やっぱり、万南ちゃんや」

『忍足さん、お久しぶりです』



氷帝の忍足侑士。


幼なじみである日吉若繋がりで仲良くなった、氷帝テニス部レギュラーの1人。



『忍足さん、どうしてここに?』

「ああ、親父に書類を届けてくれって頼まれてな。ほら、ここの増井先生、俺の親父の友人やから」

『そうだったんですか』

「万南ちゃんは?もしかして、体調あんま良くないん?」




氷帝の皆は、私の病気のことを知っている。


だから、たまに体調はどうか?といった旨のメールが送られてきたりするのだ。




『いえ、全然大丈夫です!!ちょっと違和感があったので、一応来てみただけですから』

「そっか。それならええんやけどな…」

『はい。心配してくれて、ありがとうございます』

「おお。…じゃ、俺はおつかい済ましてくるわ」

『はい。それじゃ、次に会うのは合宿ですね』

「せやな。また来週」




忍足さんと別れた後、昨日幸村部長に言われたことを言えばよかったかな、と後悔した。


…いや、今イジメのことを言ったら、優しい皆のことだ、たくさん迷惑と心配をかけてしまう。


ギリギリまで話さないでおこう。




『…それにしても、今の状況で無理をしないっていうのは、難しいな…』


ため息を吐いて、今度こそ待合室に向かった。








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