Don't Look Back

□すべてのまり
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絆が、こんなにも脆いものだったなんて、知らなかった。



…皆、こんな私でごめんなさい。


こんなに弱い私で、

本当にごめんなさい……──




  Don't Look Back






春。



切「万南っ、早く部活行こうぜ!!」

『分かった!!』



中学1年生の時に立海大附属中の男子テニス部に入部した私達。


それから中学2年、3年と過ごし、去年、立海大附属高校に入学した。



そしてこの春、私と赤也は高校2年生になった。




神の子と呼ばれる幸村先輩を筆頭に、中学生の時全国を目指し、鎬を削ったあのメンバーが、今年再び復活した。



私達が中学3年生の時、つまり幸村先輩達が高校1年生の時。

彼らは全国大会高校生の部で見事、優勝を飾った。


それから、去年は私達も参加し、全国大会ニ連覇を成し遂げた。



そして、今年。


今年は、全国大会三連覇がかかっている。


何となく、3年前の中学大会を彷彿とさせる。



いつもと変わらないメンバー。

いつもと変わらない環境。


さぁ、普段と同じように三連覇を成し遂げようじゃないかと意気込んだ矢先、ある事件が起こった。













事の始まりは2ヶ月前の6月。


テニス部に、新入部員が入ってきた。



もちろん、ミーハー気分で登録してきた男子部員もいる。


しかし、テニス部が気にしているのは男子ではなく、女子。



テニス部レギュラーは、身内から見ても美形揃いで、ミーハー気分でマネージャーに登録する女子も少なくはない。


もちろん、男子に負けず劣らずマネージャーもハード。


『やってみたいなぁ』

で成立する仕事じゃない。


1ヶ月、2ヶ月……


月が経つにつれて、沢山いた新入部員は3分の1以下にまで減少。


10人はいたマネージャー希望者も、6月の時点では私を含めなければ、2人になっていた。



そして、つい最近その内の1人がテニス部を辞め、とうとう私と新入部員の秋本花音ちゃんだけになった。






「私、万南先輩に憧れてマネージャーになったんですよぉ」



嬉しそうに話す花音ちゃんを見て、照れくさいながらも物凄く嬉しかったのを、今でも覚えてる。



慣れないマネージャー業を一生懸命こなす花音ちゃんは、私の中で妹のような存在になっていた。



「今日、花音ちゃんがこんなことを言った」

「今日、花音ちゃんがこんなことをした」



友達に、テニス部の皆に話す度、「本当に好きだねぇ」と笑われた。


休日には一緒に遊びに行ったし、家に招待したこともある。


私は花音ちゃんを、本当の妹のように接していた。







そんな花音ちゃんが私から離れていったのは、今から1ヶ月前。


7月に入ったばかりの頃だった。






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