SHORT

□隣席の少女
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『あのっ…よ、よろしくね』



彼女の第一印象は
“おとなしい奴”




〜隣席の少女〜





学期ごとに行われる席替え。

俺は、窓際の一番後ろという神懸かった席に別れを告げて、廊下側の一番後ろに移動した。



「うわっ、またお前が後ろかよ、切原!」

「好きでなったんじゃねぇし!」



1こ前の席でも前後だった友人の長谷川と話をしていると、俺の隣の席に誰かが座った。


男子だったらいいなぁ、と思いつつ隣に目をやると、そこに座っていたのは女子だった。



『あのっ…よ、よろしくね』

「お、おう」



正直、俺は人の名前を覚えるのは苦手だ。

目立つ奴の名前なら分かるけど、まだクラスメイトの半分くらいは分からなかった。


当然、隣に座ってる女子の名前も分からない。



ただ、すっげーおとなしそうな奴で、俺が得意なタイプではない。それだけは分かった。



「おっ、切原の隣桐原さんか。よろしくな」

『よろしく、長谷川くん』


逆に長谷川は社交的な奴で、クラスメイトの名前は完璧らしい。


とりあえず、隣の女子が桐原という名前なのは分かった。









〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


「…ったく、切原はまた居眠りか」



テニス部の練習は恐ろしいほど疲れる。

いくら寝ても寝足りないくらいに。


まぁそういう訳で、俺は居眠り常習犯として先生から目を付けられていた。


「切原っ!起きろ!!」

「Σどわっ!」



飛び起きた俺を見て、クラスメイトはクスクス笑った。


「相変わらず、お前は寝過ぎだ」

「ねっ、寝てないっスよ!」

「ほう、じゃあ『私はゲームをするためにコンピュータを使います』を英文にしてみろ。起きて説明を聞いていたら簡単な問題だぞ?」



うわぁ…よりにもよって苦手な英語かよ…

国語ならそれなりにいけたのによ。



「頼む長谷川、教えてくれ!」


頼みの綱である長谷川に声を掛けた。


「しーらね」


しかしあっさりと躱された。

くそー、それでもダチかよ!


パサッ


「ん?」

机に1枚の畳まれた紙が投げられた。


開くと、答えが書いてあった。



「え…と、I use a computer to play games.」

「お、正解だが…居眠りはするなよ!」

「へーい」



先生が黒板に向かった時に、俺は紙を投げてくれた隣を向いた。



「サンキューなっ、桐原」

『ううん、いいよ。切原くん部活で忙しいしね』


桐原はそう言ってニコッと笑った。


「お、おう…」




彼女の第二印象は
“すっげー優しくて、笑顔が可愛い奴”







〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



「桐原、最近元気ねぇな」

『え…そ、そんなことないよ?』



あれから、俺は桐原と話すことが増えた。




丸「そーいや赤也」

「何スか?」

丸「最近仲が良い女子がいるみたいだな」



部活中、丸井先輩に言われた。


「え゙っ、何で知ってんスか!」

丸「3年でも有名だぜ?今まで女子と絡んでなかった赤也が一定の女子と仲が良いって」



3年の教室にまで広まってんのか…


丸「気を付けた方がいいぜぃ」

「へ?」

丸「女子の嫉妬は怖いからなぁ」



…嫉妬?




「桐原、最近元気ねぇな」

『え…そ、そんなことないよ?』




……まさか…






〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


翌日、俺は桐原に聞いてみた。



「なぁ桐原、もしかしてさ…嫌がらせされてたりするか…?」

『っ!そ、そんなことないよ!』



…やっぱりな…


と、その時。
クラスでも目立つ女子が近づいてきた。



「ねぇ桐原さん。私、昨日言ったわよね?」

『あ…え、と……』



何故か体が勝手に動いた。




「おい、コイツにちょっかい出すな」


俺は、今にも泣き出しそうな桐原を抱き寄せた。

クラス中が騒ぎ出したけど、気にしねぇ。



『なっ…、切原くん!?』

「俺が勝手に近づいてるだけで、コイツは悪くないぜ」

「切原くん、どうして…っ!」

「…俺が、桐原のことが好きだからだよ!」



まさかの公開告白に、どこからか叫び声も聞こえてきた。



『きっ、切原くん…っ』

「悪ぃ、こんな形で言うつもりじゃなかったんだけどな…」



すると、桐原は俺の好きなあの可愛い笑顔になった。


『実は、私も…好き…///』



その瞬間、俺の理性が壊れた。



《キャァァァァ!!!!》


俺はクラスのど真ん中で、堂々と桐原にキスをした。



『…っ、////』


顔を真っ赤にする桐原が、すっげー可愛い。


俺はクラス中に聞こえるように叫んだ。



「万南は俺のモンだ!手ぇ出したら誰だろうと潰す!!」



すると何故か、拍手に包まれた。



『赤也くん…っ、大好き!』




〜隣席の少女〜

彼女の第三印象は
“最高に可愛い俺の彼女!!”

 

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