SHORT
□隣席の少女
1ページ/1ページ
『あのっ…よ、よろしくね』
彼女の第一印象は
“おとなしい奴”
〜隣席の少女〜
学期ごとに行われる席替え。
俺は、窓際の一番後ろという神懸かった席に別れを告げて、廊下側の一番後ろに移動した。
「うわっ、またお前が後ろかよ、切原!」
「好きでなったんじゃねぇし!」
1こ前の席でも前後だった友人の長谷川と話をしていると、俺の隣の席に誰かが座った。
男子だったらいいなぁ、と思いつつ隣に目をやると、そこに座っていたのは女子だった。
『あのっ…よ、よろしくね』
「お、おう」
正直、俺は人の名前を覚えるのは苦手だ。
目立つ奴の名前なら分かるけど、まだクラスメイトの半分くらいは分からなかった。
当然、隣に座ってる女子の名前も分からない。
ただ、すっげーおとなしそうな奴で、俺が得意なタイプではない。それだけは分かった。
「おっ、切原の隣桐原さんか。よろしくな」
『よろしく、長谷川くん』
逆に長谷川は社交的な奴で、クラスメイトの名前は完璧らしい。
とりあえず、隣の女子が桐原という名前なのは分かった。
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
「…ったく、切原はまた居眠りか」
テニス部の練習は恐ろしいほど疲れる。
いくら寝ても寝足りないくらいに。
まぁそういう訳で、俺は居眠り常習犯として先生から目を付けられていた。
「切原っ!起きろ!!」
「Σどわっ!」
飛び起きた俺を見て、クラスメイトはクスクス笑った。
「相変わらず、お前は寝過ぎだ」
「ねっ、寝てないっスよ!」
「ほう、じゃあ『私はゲームをするためにコンピュータを使います』を英文にしてみろ。起きて説明を聞いていたら簡単な問題だぞ?」
うわぁ…よりにもよって苦手な英語かよ…
国語ならそれなりにいけたのによ。
「頼む長谷川、教えてくれ!」
頼みの綱である長谷川に声を掛けた。
「しーらね」
しかしあっさりと躱された。
くそー、それでもダチかよ!
パサッ
「ん?」
机に1枚の畳まれた紙が投げられた。
開くと、答えが書いてあった。
「え…と、I use a computer to play games.」
「お、正解だが…居眠りはするなよ!」
「へーい」
先生が黒板に向かった時に、俺は紙を投げてくれた隣を向いた。
「サンキューなっ、桐原」
『ううん、いいよ。切原くん部活で忙しいしね』
桐原はそう言ってニコッと笑った。
「お、おう…」
彼女の第二印象は
“すっげー優しくて、笑顔が可愛い奴”
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
「桐原、最近元気ねぇな」
『え…そ、そんなことないよ?』
あれから、俺は桐原と話すことが増えた。
丸「そーいや赤也」
「何スか?」
丸「最近仲が良い女子がいるみたいだな」
部活中、丸井先輩に言われた。
「え゙っ、何で知ってんスか!」
丸「3年でも有名だぜ?今まで女子と絡んでなかった赤也が一定の女子と仲が良いって」
3年の教室にまで広まってんのか…
丸「気を付けた方がいいぜぃ」
「へ?」
丸「女子の嫉妬は怖いからなぁ」
…嫉妬?
「桐原、最近元気ねぇな」
『え…そ、そんなことないよ?』
……まさか…
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜
翌日、俺は桐原に聞いてみた。
「なぁ桐原、もしかしてさ…嫌がらせされてたりするか…?」
『っ!そ、そんなことないよ!』
…やっぱりな…
と、その時。
クラスでも目立つ女子が近づいてきた。
「ねぇ桐原さん。私、昨日言ったわよね?」
『あ…え、と……』
何故か体が勝手に動いた。
「おい、コイツにちょっかい出すな」
俺は、今にも泣き出しそうな桐原を抱き寄せた。
クラス中が騒ぎ出したけど、気にしねぇ。
『なっ…、切原くん!?』
「俺が勝手に近づいてるだけで、コイツは悪くないぜ」
「切原くん、どうして…っ!」
「…俺が、桐原のことが好きだからだよ!」
まさかの公開告白に、どこからか叫び声も聞こえてきた。
『きっ、切原くん…っ』
「悪ぃ、こんな形で言うつもりじゃなかったんだけどな…」
すると、桐原は俺の好きなあの可愛い笑顔になった。
『実は、私も…好き…///』
その瞬間、俺の理性が壊れた。
《キャァァァァ!!!!》
俺はクラスのど真ん中で、堂々と桐原にキスをした。
『…っ、////』
顔を真っ赤にする桐原が、すっげー可愛い。
俺はクラス中に聞こえるように叫んだ。
「万南は俺のモンだ!手ぇ出したら誰だろうと潰す!!」
すると何故か、拍手に包まれた。
『赤也くん…っ、大好き!』
〜隣席の少女〜
彼女の第三印象は
“最高に可愛い俺の彼女!!”