SHORT

□待ちぼうけ
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『……遅い…』






〜待ちぼうけ〜





私、桐原万南はこの暑い中待ちぼうけをくらっていた。



それは遡ること半日前……





〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


「桐原さん」



いきなり声を掛けられて振り向くと、そこにはテニス部のモテモテな不二周助が立っていた。




『え…と、不二くん…?』

「クスッ、そんなに緊張しないで」




今まで一度も話したことがない不二くんに声を掛けられたことに驚いていたら、これまた綺麗な顔で笑われた。



『ご、ご用件は?』

「うん、今日キミに話したいことがあって。部活が終わるまで待っててくれないかな?」





………はい?


今、何と?



いきなりの誘いに焦っている私を尻目に不二くんは「じゃあね」と王子様スマイルを振りまいて去っていった。





〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜



……そして今に至る…みたいな。




……それにしても遅い。


テニス部って何時まであるの?




『……帰ろっかな』



私だって暇じゃない。

むしろ2時間も待ったんだから褒めてほしい。



……よし、帰ろう。

明日、朝一で不二くんに謝ればいいや。



そう思い校門に体を向けた時…




「「ちょっと待ちなさいよ」」


後ろから呼び止められた。


そこには同学年の派手派手3人組。



『……何?』

女1「アンタ、不二くんの何なの?」

『…は?』

女2「不二くんはねぇ、皆のアイドルなの」

女3「抜け駆けとか、超迷惑なんだよね」



……何、こいつら


“抜け駆け”?




『……何で?』

「「「あん?」」」

『不二くんも1人の中学生でしょ?何で自由に恋できないの?』

女2「なっ、何よ!」

『貴女達がそんなこと言う権利なんてないんじゃない?』



私はあくまで当然のことを言ったはず。

なのに1人が顔を真っ赤にした。


女1「っ、アンタ超ムカつくっ!!」


彼女は腕を振り上げた。


『…っ!』

「…何をしているの?」



思わず目を瞑ったら聞こえてきた声。



「「「っ、不二くんっ!?」」」



不二くんは、殴ろうとした彼女の腕をつかんでいた。


「…どういうこと?」

女3「違うのっ、コレは…!!」



すると今までの優しそうな不二くんからは信じられないほど怒りに満ちた表情で、不二くんが言った。



「何が違うの?言い訳は見苦しいよ。あと、彼女に手を出したら僕が許さないから」



すると3人は顔を青くして去っていった。



「大丈夫?何もされてない?」

『う、うん…』



心配そうに顔を覗き込んでくる不二くん。




「…かなり待たせちゃったね」


申し訳なさそうに言う不二くんを見たら、「それはもう待ちました!」なんて言えなかった。



「…ねぇ、キミをここに呼んだ理由、なんとなくは気付いてるよね?」

『え……』



私を呼んだ理由……これは自意識過剰じゃなくても、アレ……だよね?



『え…と、』

「クスッ、照れてるの?可愛いなぁ」



不二くんは自分の顔を思い切り私に近付けた。



「ねぇ…僕キミのことが好きなんだ……」

『っ!?///』



顔が通り過ぎたかと思ったら、耳元でいきなり囁かれた。


恥ずかしさのあまり、思わず不二くんから離れた。


すると不二くんはまた不敵な笑みを浮かべて、



「付き合ってくれるよね……万南?」



そう言った。


そんな不二くんに、私は思わず頷いてしまった。







《END》

―きっと、不二くんには何をしてもかなわない気がする―

*
 

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