青エク
□心惑わされるのは、
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「いーや!!なっなんで私がこんなドベに教えなきゃならないんですか、奥・村・先・生!!」
「なっ!だっ誰がドベだ誰が!!」
「アンタ!アンタしかいないでしょ!?奥村燐!!!」
私は奥村燐が苦手だ。
バカだし、授業は真面目に受けないし、我ながらこれは理不尽だと思うけれど、何だか嫌いなのだ。
「愛理さんは成績優秀で、とても優しい人ですし…僕は期待してますよ。」
反対に、奥村燐の弟らしい(認めたくはないけれど)奥村雪男は私の尊敬する人物だ。
慕っている、だからこそ、期待しているなんて言われて断れるはずがなかった。
自慢じゃあないけど、テストで100点なんてざらじゃない…この私の実力、今こそあの忌々しい奥村燐に見せ付けてやろうじゃない。
「………で、なんで私アンタに英語を教えてるわけ?」
「帰国女子だからだろ!」
「バーカ。それを言うなら帰国子女よ、だからドベなのアンタは!」
時は変わって教室にて。何故だか中学生英語(それもbe動詞から!)を教える私とドベ。なんつーか、私ってば苦労人。
「ドベドベ言ってンなよ、この鬼!!」
「んなっ!!?もうアンタなんか知りません。I don't like 奥村燐!」
ぷいとそっぽを向いて私は私の勉強に取り掛かる。バカな奥村燐は私の英語なんてわからないんでしょうし、何ていうかアイツと2人きりだって思うたんびに胸の奥の方がきりきり痛む。胃もたれ?ストレス?
そうして苛々しながらノートを捲ったらついてないかな、指を切った。
「いっつっ!」
「どーした?」
「紙で手切った」
「お前のがバカじゃん!!」
「うっさいわ!!」
「バーカ、バーカ。っと、ほら、見せてみろよ」
バカは私、解ってる。
うるさいのは私の心臓、解ってる。
見せてみろととられた手首。アイツの指が触れているところだけジンジンと熱い。
珍しく真面目な顔して私の指を見ているアイツの睫毛の長さとか変に考えてしまって、胸の痛みは酷くなるばかり。
「ま、大きい傷じゃねーみたいだな!」
離れた指が名残惜しいわけじゃあない。そんなことあるわけない。
にっと笑ったアイツ、ああほら、アンタなんか大嫌い!!
<<心惑わされるのは、>>
(嫌い、)
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titleは確かに恋だった様より。