青エク

□あたたかな
1ページ/1ページ


「ね、勝呂」

勝呂の膝に愛理の頭がこてんと乗っかった。驚きのあまり勝呂はまるで魚のようにぱくぱくと口の開閉を繰り返す。このような状況はあまり得意ではない。
愛理は勝呂の中学からの同級生だった。まさか同じ学校を目指すとは思ってもみなかったしまさか小さな恋慕がこんなに大きくなるとは思ってもみなかった。そしてまさか彼女が自分自身を好いているだなんて誰が考えただろうか。

「なにしとる」

「膝枕」

「普通逆やろ」

くふっと愛理が笑った。愛しさから思い切り抱き締めてやりたくなったがそこはなんとか持ちこたえる。勝呂だってそこまで馬鹿じゃあない。

「勝呂」

「今日はやけに呼ぶな」

「いいじゃん。勝呂、勝呂、竜二」

擦れたような声がやけに色っぽい。いやいやいやと己の考えを否定するように首を振る。今きっと愛理は甘えたいだけなのだ。そこをわかってやらなければ、だからつまりその彼氏として。そして男として。

不意に膝の上の頭が動いて、丁度勝呂の下腹部辺りに顔を埋めるようにして愛理は腕を彼の腰へと回した。勝呂は己の顔に熱が集中して集まるのを感じる。愛理のこういう突拍子のない行動にはなかなか慣れない。

「竜二…私ね、私なんだか疲れた」

「ほうか。ほんなら寝たらええ」

何時だって気丈に振る舞う愛理はこれで案外弱い娘なのだ。勝呂は知っている。
柔らかいわけではない芯のしっかりした髪の毛だって撫でれば使っているシャンプーの女らしい香が仄かにした。






<<<あたたかな>>>



(ヴォワ!!?)(志摩さんどないし…………)(お嬢と坊が………仲睦まじく)(落ち着くべきや僕ら)(いや、だけど子猫さん、ここは俺の部屋や!なんでちょい抜けただけでこんひとらこんなにいちゃつきますのん!?羨ましっ!!)(少し出かけてきません?)(…せやな、ナンパでも行かへん?)(志摩さんは一回往生すべきや)(酷い!)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ