青エク
□好きなのは
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「雪ってさぁ、燐のことすごい好きだよねぇ」
(嫌な予感がする!)
長年の経験から雪男は昔馴染みであり実は片想い中の女の声音によからぬ匂いがすることに早々気が付いた。
がしかし、長年の経験からこのような声音の愛理から逃げることは不可能、そう希望が闇に消え失せていることにも早々に気が付いていた。
「雪って……燐と…もうそういう仲なの?」
「どういう仲を想像しているのか知らないけど、至って普通の兄弟さ」
最後の抵抗だと言わんばかりにそういう仲と言葉を紡いだ際の愛理の怖い位輝いた瞳から逃れるように雪男は肩を竦めたけれど"普通"が普通に通じない愛理にとって、最早その行動も無駄と言えた。
「普通に毎晩大変なんですね、わかります。」
「どうしてそうなるんだい?!」
「あ、ごっめーん、大変なのは寧ろ燐の方?」
「そういう問題じゃなくて!!あーもうっ!!」
幸いなことにと言うべきか、相部屋の、話題の中にいる兄は今この部屋に居ない。
生き生きとした表情で語りはじめる愛理の今まで気付かなかったけれど白く細い腕をぐいと引っ張る。愛理はベッドの上で雪男は床に座っていたから必然的に雪男の胸の中に愛理が収まる構図になったのだが、愛理は何が起こったのかよくわからぬらしく雪男の顔をきょとんと見つめた。
「どったの雪?」
息を吸う。
「僕が、僕が―――
好きなのは
(兄さんじゃない、キミだ)(えー、私三角関係とか無理なんだけど)(どうしたらそうなるの!?)(私の腐女子脳を駆使すれば簡単なことさ!)