夢制作

□クリシュナと偽物の恋人
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クリシュナ2 約束する



『はあぁぁぁぁぁあ?!
何言っちゃってるんでございますですか?!』

僕と付き合ってくれない?
クリシュナ君がそう言ってからすぐさま出た返事だ。
私だけでなく、クリシュナ君とお昼ご飯を共にしていた日向君達も目を丸くしていた。
袴田君に至ってはおにぎりを喉に詰まらせたようで、慌ててお茶を流し込んでいる。

「…確か、楢鹿の盗撮女は好きな人がいなくて、ビジネスライクだって聞いたんだけど。」

『間違ってないですよ!ないですけど!
何でそこから付き合う事に発展するの?!』

混乱していると、日向君が合点が言ったようにクリシュナ君を見た。

「お前…もしかしてあれか?
付き合うっていっても偽物の恋人って事か?」

日向君の言葉にクリシュナ君がほうけたような顔をする。

「…あれ?そう言わなかったっけ?」

…大事な所を言わないでどうする…!!

『…いわゆる、恋人契約ってとこ?』

聞き返すと、クリシュナ君は私に頷く。

「うん。
…俺、よく女の子に告白されるんだけど、今のところ誰とも付き合う気は無いんだ。
でもそれなら告白してくる子がかわいそうでしょ?
だから。」

『偽りの恋人をつくって、告白する前に諦めさせる…と?』

「駄目…かな?」

そう言ってクリシュナ君はちょい、と首を右にかしげる。
なんだその可愛い動きは…。
思わず撮りたい衝動にかられたのを必死で抑えた。

『駄目も何も…
それって私に利点がないどころか、損失じゃない…?
女子の信用も失うし、クリシュナ君に付き合ってる時間は写真を取れないし。』

だいたい好きでもないやつと付き合う事自体、不誠実だ。
盗撮なんてしてる私だけど、恋愛に関しては誠実でいたい。
気持ちの問題だしね。

「…じゃあそれのメンテナンスじゃ駄目?」

クリシュナ君はなおも諦めずに、私のカメラを指差した。

『…メンテナンス?』

「そう。
そのカメラ、かなり古いものだよね?もう売られてないし。
かなりシャッターの所が潰れてるけど、修理してもらえないでしょ?」

『…』

クリシュナ君の言っている事は当たっている。
私のカメラはかなり古いもので、修理はしてもらえないのだ。

『…クリシュナ君なら、このカメラを修理できるの?』

「うん、約束する。」

確かクリシュナ君は大手電化製品量販店の社長の息子だったはずだ。
お金持ちだし、人づてもある。そう言ったことは簡単にできるのだろう。


「…名無しのさん、あ、その、こういうのはやっぱりやめた方が…」

六道くんが私の顔を不安げに見る。
けど、ごめん

『クリシュナ君、よろしく。
彼女の名無しの名前です。』

カメラの事となるなら、話は別なんだ。

「よろしく、名無しのさん……いや、名前。」

クリシュナ君がそういって、ふわりと笑った。



(君の為じゃないわ。私の為よ。)
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