夢制作
□イヅルと私。
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変質者事件 前
『うぁ〜寝不足だぁ…』
ふぁぁ、とあくびをして目をこする。
「うっわ、名前、クマ酷いよ。」
私の前の席で顔をしかめるのは美濃くん。
『美濃くんはお肌もツヤツヤだし…うらやましいよ。』
かっこいい、よりむしろ、可愛い、という形容詞が似合いそうな男の子が美濃くんだ。
「夜遅かったのか?」
『そうなの!聞いてよ美濃くん!!
イヅーーー朝長が生徒会の資料持って来て、手伝えって言うんだよ!』
「うーん…毎回聞いてるけど、にわかに信じがたいよな。」
困ったように言う美濃くん。
皆は眉目秀麗なイヅルしか知らないからそんなこと言えるんだ!!
『うぅ…私の何が気に入らないんだ!!ちょっとは優しくしてくれたって…』
「すねるなよ名前〜。
それが本当なら相思相愛だって。
名前の前でだけそんなんなんだろ?」
『は?
いや、私別に朝長のこと好きでも何でもないよ?
絶対、朝長もね。』
「だって名前、朝長の話ばっかじゃん?」
『だって悩みなんだもん!』
「へーへー。」
美濃くんは聞き飽きたように気の無い返事をした。
「…あ、そういえば、名前の家ってあのでかい公園からすこしそれた所だよな?」
『流石学年トップクラス。記憶力いいね〜。
そーだよ。』
「なんかその公園の近くで最近、全裸の男が女子高生を追いかけてくるらしいよ。」
『…いやー私は可愛くないから関係無いかな?
美濃くんの方がきをつけた方がいいと思う。』
「名前、うぜぇ。
余計なお世話だ。」
美濃くんがこっちを睨む。おお怖い。
「おい、そこの阿呆。」
『まさかとは思うけど阿呆って私の事じゃないでしょうね。』
「よくわかってるじゃないか。」
『イヅルが学校で私に話しかけるなんて珍しい。
つっても、教室に私ひとりだったから話しかけてきたのかな?』
「お前がオレを学校で名前で呼ぶのも珍しいな。」
『学校で下の名前で呼んでたらイヅルのファンにボコられる。』
日誌を書く手を止めて、肩をすくめる。
『生徒会はおわったの?』
「おわらせずにお前の所行くほど間抜けじゃない。」
『普通におわったって言ってよ!
どうかした?何か用?』
「…お前、誰かと一緒に帰る約束してるか?」
『してないよ?』
「じゃあいいや。
…オレは肩がこっている。」
『ほぉ。』
「荷物重いから、持て。」
『ちょ、私女の子なんですけど…!』
「ふーん、そう。
…で?」
『イヅルって本当に容赦ないよね…私に対してだけ!!』
結局断れず、一緒に帰ることになった。
…だってイヅル、言うこと聞かないとあとあとうるさいんだもん。
「じゃあお前はこれ持て。」
『はいはい。
……?』
荷物を受け取り、首を傾げる。
いや、何かこれすごく軽いんだけど…?
イヅルに言おうと思ったけど、それを言ったらきっと、持ちたりないのか?とか言い出してやっかいだ…
やっぱり、言わないでおこう。
「ほら、早くしろ。」
下駄箱をでたイヅルが急かす。
『ちょっと待ってよー!』
「遅い。」
蔑んだ顔で私を見ているイヅル。
それでもちゃんと待っててくれてるから、嫌いになれないんだよ。
その日だけでなくその次の日も、そのまた次の日も、イヅルは私に荷物持ちをさせた。
『人使い粗い…!!』
今日はノアちゃんに愚痴をこぼしていた。
「苦労してるね名前…
…でも荷物軽いんでしょう?」
『うん。そこが不思議なんだよね。
絶対持てるでしょ?って感じの軽さ。』
そうなのだ。
毎回私が持つイヅルの荷物はあり得ないほど軽い。
「…名前と一緒に帰りたいだけだったりして。」
『ノアちゃん何言ってんの?
そんなのあるわけないない。
きっと私を弄んでるんだよ!
軽いなぁ〜、おかしいなぁ〜って首を傾げる私を見てほくそ笑んでるんだよ!』
「ん〜?
でも名前ちゃんの用事が終わるの待ってくれるんでしょ?」
『朝長はイタズラに全力を注ぐタイプだから、その位してもおかしくないよ。』
「…そう?」
『なんなのノアちゃん…。
朝長と私をくっ付けたいの?
悪いけど双方にそんな気がないから無理だよ?』
「そうかしら?」
緩やかに口を弧にして笑うノアちゃん。
『そうだよ!
私、朝長とは唯の幼馴染だもん!』
「でも朝長くんにとっての名前は唯の幼馴染じゃないかもしれないわ。」
『はぁ?
女の子扱いすらされないのに?』