短編・シリーズ

□黄色い彼との攻防戦
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○日常

「なあブス」

『ブスじゃねぇクソホモ』

「ホモじゃねぇデブ」

『デブじゃねぇシャララ』

「不毛っす…」

『なに、毛が無いの?ハゲなの?』

「ちげぇよバカか。」

『冗談だよホモ』

確かに不毛な言い争いの後、黄瀬はため息を吐いた。

「…だいたい、なんで俺がホモなんすか。」

『そんなのお前が気色の悪い声で、くろこっち〜!って言ってるからだろうが。』

「なるほど、嫉妬ね。」

『なるホモ、勘違いも甚だしいぞ。』

「だから!俺は女の子が好き!
ノーマルなんすよ。」

『人は好きなものに対して罵詈雑言あびせたりしーまーせーん』

「俺がいつ女の子に罵詈雑言浴びせたよ」

『今だろ。』

黄瀬は鼻でわらった。
そんな人を小馬鹿にした表情も絵になるんだから、つくづくイケメンって罪だよね。…じゃなくて。

『絶対今、お前なんか女の子に入ってねーっす、って思ったでしょ。』

「残念。
こいつ自分のこと女の子だと思ってたんだ…、という失笑でした。」

『意味的にはあってるじゃん。』

「全然違うね。」

人気読者モデルである黄瀬は
確かにイケメンで笑顔はシャララで、バスケにおいてはパーフェクトコピーとかいう完璧な模倣をやってのけるハイスペック男子だ。
ただし実際のヤツは上記のような事しかいわない。
下衆…心根の卑しいもの、また、下劣なさま
その言葉こそ、ヤツにふさわしい。



○ぎゅうぎゅう

『おいクソホモ、私のノート何処にやった?』

「俺が使ってやってる。」

『何が使ってやってる、だ!!
お前の為に眠気を我慢してノートをとったわけじゃないぞ!』

「は?
黄瀬様に使われるなんて、一生分の幸福です…!ありがとう黄瀬様!
だろ?」ギュウ

『むがっ!頬を!捻じ曲げるな!』

「整形してやってるんですー感謝しろ。」ギュウ

『むがが…!』




○ぱらぱら

なんとなくコンビニにはいってなんとなく雑誌の欄を見ると、ムカつくクソホモの顔がデカデカと印刷されていた。

なんか面白いこと書いてないかな、と思いつつ開くとこれまた、秋の着こなしセブンデイズだのなんだの、彼がオシャレな服を着て写っていた。

『ふーん…』

確かにイケメンでスタイルもいいから一際目立つ。笑った笑顔も、完璧、だ。

「…欲しいならタダでやるのに。」

『っうわっ!』

「お化けが出たみたいに叫ばないだ欲しいっす。」

『お化けの方がまだ善良だ。』

「…可愛くないっすね。」

『ブスだからね。』

「開き直るとか…
で、それ欲しかったらあげるけど?家に数冊あるから。」

『何のためにクソホモの顔を拝まなきゃいけないんだ。』

「え、だってお前俺のこと好きじゃん?」

『…脳みそ腐ってるの?』

「そっちこそ、素直になれば?」

『ヤダこの人、話通じない!』

「はいはい、で、いらないの?」

『てめぇのツラなんか家で拝みたくねぇわ。
つーかいつでも見れる。
珍獣じゃあるまいし。』

「…ふーん。」

黄瀬は無表情で適当な返事をした後、軟水を買って出て行った。そういやあいつ、水が好きなんだっけ。



○ごくごく

『うまー…』

数量限定発売だったトロピカルミックスデンジャラスジュースを買った私は只今大満足。
なにこれ美味しい。

また買いたいけど人気だからもうないだろう。

『大切に飲もう…って、』

「なにこれマッズ!ごほごほっ!
なんすかコレ!劇物を持ってこないで欲しいっす!」

『ああぁぁぁあ!こんのクソホモぉ!!
よりによって、それを…!』

「あぁ?あんなクソまずいもの飲んでたんすか?
あんな物飲むからブスになるんすか?」

『私を愚弄するのは千歩譲って許してやろう…けどな、そのジュースをバカにするのは許さんぞ…!』

「頭もバカなのに味覚までバカなんて…可哀想っす…」

『だーっ!うるさい!
いいから返せ!!』

「あーもー…いらないっすよこんなの!」

じゅるる…『って、もう無いじゃん!』

「はっ!今気づいたっすけど、もしかしてブスの飲みかけ…」

『そうだけど…』

「あああぁぁぁあ!
ブスの菌が移るっす…!」ごしごし

『って、私もじゃん…!
ホモになる…!』ごしごし
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