短編・シリーズ
□黄色い彼との攻防戦
1ページ/3ページ
○日常
「なあブス」
『ブスじゃねぇクソホモ』
「ホモじゃねぇデブ」
『デブじゃねぇシャララ』
「不毛っす…」
『なに、毛が無いの?ハゲなの?』
「ちげぇよバカか。」
『冗談だよホモ』
確かに不毛な言い争いの後、黄瀬はため息を吐いた。
「…だいたい、なんで俺がホモなんすか。」
『そんなのお前が気色の悪い声で、くろこっち〜!って言ってるからだろうが。』
「なるほど、嫉妬ね。」
『なるホモ、勘違いも甚だしいぞ。』
「だから!俺は女の子が好き!
ノーマルなんすよ。」
『人は好きなものに対して罵詈雑言あびせたりしーまーせーん』
「俺がいつ女の子に罵詈雑言浴びせたよ」
『今だろ。』
黄瀬は鼻でわらった。
そんな人を小馬鹿にした表情も絵になるんだから、つくづくイケメンって罪だよね。…じゃなくて。
『絶対今、お前なんか女の子に入ってねーっす、って思ったでしょ。』
「残念。
こいつ自分のこと女の子だと思ってたんだ…、という失笑でした。」
『意味的にはあってるじゃん。』
「全然違うね。」
人気読者モデルである黄瀬は
確かにイケメンで笑顔はシャララで、バスケにおいてはパーフェクトコピーとかいう完璧な模倣をやってのけるハイスペック男子だ。
ただし実際のヤツは上記のような事しかいわない。
下衆…心根の卑しいもの、また、下劣なさま
その言葉こそ、ヤツにふさわしい。
○ぎゅうぎゅう
『おいクソホモ、私のノート何処にやった?』
「俺が使ってやってる。」
『何が使ってやってる、だ!!
お前の為に眠気を我慢してノートをとったわけじゃないぞ!』
「は?
黄瀬様に使われるなんて、一生分の幸福です…!ありがとう黄瀬様!
だろ?」ギュウ
『むがっ!頬を!捻じ曲げるな!』
「整形してやってるんですー感謝しろ。」ギュウ
『むがが…!』
○ぱらぱら
なんとなくコンビニにはいってなんとなく雑誌の欄を見ると、ムカつくクソホモの顔がデカデカと印刷されていた。
なんか面白いこと書いてないかな、と思いつつ開くとこれまた、秋の着こなしセブンデイズだのなんだの、彼がオシャレな服を着て写っていた。
『ふーん…』
確かにイケメンでスタイルもいいから一際目立つ。笑った笑顔も、完璧、だ。
「…欲しいならタダでやるのに。」
『っうわっ!』
「お化けが出たみたいに叫ばないだ欲しいっす。」
『お化けの方がまだ善良だ。』
「…可愛くないっすね。」
『ブスだからね。』
「開き直るとか…
で、それ欲しかったらあげるけど?家に数冊あるから。」
『何のためにクソホモの顔を拝まなきゃいけないんだ。』
「え、だってお前俺のこと好きじゃん?」
『…脳みそ腐ってるの?』
「そっちこそ、素直になれば?」
『ヤダこの人、話通じない!』
「はいはい、で、いらないの?」
『てめぇのツラなんか家で拝みたくねぇわ。
つーかいつでも見れる。
珍獣じゃあるまいし。』
「…ふーん。」
黄瀬は無表情で適当な返事をした後、軟水を買って出て行った。そういやあいつ、水が好きなんだっけ。
○ごくごく
『うまー…』
数量限定発売だったトロピカルミックスデンジャラスジュースを買った私は只今大満足。
なにこれ美味しい。
また買いたいけど人気だからもうないだろう。
『大切に飲もう…って、』
「なにこれマッズ!ごほごほっ!
なんすかコレ!劇物を持ってこないで欲しいっす!」
『ああぁぁぁあ!こんのクソホモぉ!!
よりによって、それを…!』
「あぁ?あんなクソまずいもの飲んでたんすか?
あんな物飲むからブスになるんすか?」
『私を愚弄するのは千歩譲って許してやろう…けどな、そのジュースをバカにするのは許さんぞ…!』
「頭もバカなのに味覚までバカなんて…可哀想っす…」
『だーっ!うるさい!
いいから返せ!!』
「あーもー…いらないっすよこんなの!」
じゅるる…『って、もう無いじゃん!』
「はっ!今気づいたっすけど、もしかしてブスの飲みかけ…」
『そうだけど…』
「あああぁぁぁあ!
ブスの菌が移るっす…!」ごしごし
『って、私もじゃん…!
ホモになる…!』ごしごし