短編・シリーズ

□てきとう占い
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てきとう占い




秀徳が獲得したキセキの世代、緑間真太郎くんが極度の運命論者であることは周知の事実だ。
彼が傾倒しているのは、メジャーなおは朝占い。
順位とそれに準じた二行程度の占いに、今日のラッキーアイテムを教えてくれるという、正に占いの基本を抑えた占いだ。

しかし私はアンチおは朝だ。だって人の今日の運とか行動が12パターンで詳しく区分されるっておかしくね?
絶対当たってない人いるよ。

そんなわけで私のオススメはてきとう占いだ。
マイナーだが、一定のファンを獲得するてきとう占いはその名のとおり、適当である。
例えば、
今日、こぼすでしょう。
とかが良い例だ。

何をこぼすのか、液体なのかそれとも愚痴をこぼす、とかなのか。
詳しいことは書いていない適当占いだが、そっちの方が色んな意味に取れるし当たる確率も高い。
だからこそ私はてきとう占いが好きなのだ。
自分の好きなように解釈できるのが自由意志的で、好感が持てる。






ふぁんふぁんふぁーん!らららーららららー!らんらんらんらぁーー!!

午前七時三十分。
ちょっと不協和音にも聞き取れるようなてきとう占いの音楽が聞こえたので、パンを咀嚼しながらテレビを食い入るように見る。
この行動はもはや習慣となっているのだ。


ーー座のあなた!
今日、落ちます。


落ちます…?
なんだそれ、どういうことだ…?
自分の星座で読み上げられた運命は、落ちる。
いつも通りの適当な占いだ。
落ちる…落ちる……。

思いついたのは階段から落ちる、だとか、テストに落ちる、だとか…そういえば気絶も落ちるっていうよね…。

『悪い想像しか浮かばない…!』








『というわけで高尾。
今日一日頼むね。』

「…いや、意味わかんねーよ!」

『だーかーら、私今日運が悪いっぽいのだよ!』

「それと俺になんの関係が?」

『隣の席のよしみでさ、今日は私の壁になってください!』

「うわー、壁とか…。
せめて、守ってほしいな!って上目遣いなら考えた。」

『チッ…めんどくさいやつだな…。
守ってほしいなー』

「前半きこえてんぞー。そして気持ちがこもってない!
…まぁ危な気だったらできる範囲で支えてやるよ。」

『よっしゃ、百人力だ…!』

高尾はホークアイ…鷹の目とかいう超人的な空間把握能力を持っているらしく…なおかつ私の隣の席だから壁にうってつけなのだ。








「…名無しの…こないだの小テスト、お前だけ不合格な。」

『げ、まじすか?先生!』

「解答欄が少しずつずれてて…」

『高尾ー!高尾ー!
私がピンチだぞ!助けろー!』

「いやそれ、俺じゃどうしようもねぇじゃん!」

『ちっ、使えない奴め…』

「理不尽だなぁ…」

その一、テストに落ちる。




「ゴンベエ、ゴンベエーー。」

ゆっさゆっさと、骨ばった手が私の睡眠を妨害する。

『ん…ぅ…ふぁぁ』

ようやく起きて、目をこすると高尾が横であきれていた。

「授業中だぜ?落ちずに起きろよ。」

ふっとこぼすように笑った高尾。

『あぁ完全に夢の中だった…
ありがと高尾助かった。』

「はいはい。」

その二、夢の中に落ちる。
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