短編・シリーズ

□真ちゃんに愛を語る
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○バニラシェイクの彼


『え?あれ、れ?』

相席だった覚えは全くない。
しかしどういうことか、ふと視線をあげると、テーブルを挟んだ椅子には、水色の髪の男子がいる。

「あ、すみません。驚かせたみたいで。僕、影が薄いんです。
最初からいたんですけど。」 

『え?!あ、こちらこそすみません!気付かなくて!』

慌てて謝ると、彼は少し微笑んだ。なんか落ち着いてる人だなぁ…。

『あ、バニラシェイク飲んでるんですね!美味しいですよねー』

私が思わず口にすると、彼は目を輝かせた。
あれ?大人っぽいかもって思ったけど、こういう顔したら同級生くらい?

「僕もそう思います。
いつもコレ、飲んでるんです。」

『飽きがこないよねぇ。
私もだよ。』

手元のカップを示すと、彼はさらに笑みを深めた。

「秀徳…なんですか?」

『え?あ、制服だもんね、そりゃあ分かるか。
うん、秀徳!高校一年!』

「僕も同じ年です。
えっと、誠凛の黒子テツヤって言います。」

『私は名無しの  ゴンベエ!よろしくね!
あ、えーとてっちゃんって呼んでいい?』

「良いですよ。これも何かの縁ですから。じゃあゴンベエさん、で。」

それからたまに見かけると、一緒にバニラシェイクを飲む仲になった。




○バニラシェイクの彼2

「ゴンベエさん、緑間君って知ってます?」

思わずバニラシェイクを吹きそうになった。あぶねぇ。もったいねぇ!

『しんちゃんのこと?!
勿論だよ!私の未来の旦那様ですから!』

「え?緑間くんの彼女…だったんですか?」

目を丸くしててっちゃんが聞いてくる。

『いや、これから彼女になる予定。ただいまアタック中。』

「ですよね…。緑間くんが彼女作るところが想像出来ませんし。」

『うん…でも私はなって見せるよ!
…えっと、てっちゃんはどういう知り合いなの?』

「中学が一緒で…部活も一緒でした。」

『え?てことはてっちゃんもキセキの世代?』

「…そうですね。スタメンでしたから。」

『うおぉ…!すごい!
じゃあてっちゃんもしんちゃんみたいにバスケ上手いんだ!いいなぁ…』

「何がですか?」

『バスケが上手かったら、もっとしんちゃんの事が理解出来るかな、って思って…。
それにしんちゃんが夢中になってるバスケに、自分も夢中になれたら、素敵じゃない?』

授業ではバスケはもう当分やっていない。もっぱらソフトテニスだ。

「…ゴンベエさん、本当に緑間くんの事が好きなんですね。」

どこか嬉しそうにてっちゃんが笑った。

「…緑間くんは難しいひとですから…誰か理解してくれるひとが必要だと、僕は思ってます。
それがゴンベエさんなら、なおさら良いです。」

てっちゃんが応援してくれているのがなんだか嬉しくて、バニラシェイクを今度おごると宣言しました。



○バニラシェイクの彼3

『し、ん、ちゃーん!!』

「うるさいのだよ。」

『中学生時代のしんちゃん、少し幼くて可愛かったね!』

「?!
お前、それをどこで見た?」

『てっちゃんに見せてもらった。』

「てっちゃん…?」

『あ、えーと、黒子くんのことだよ!』

「…あいつに会ったのか?」

『うん!行きつけのお店で仲良くなったんだ!』

「……。
……そうか。」

しんちゃんが一瞬眉をひそめた、気がする。
けど、すぐに元の表情にもどった。
どうかしたのかな?






○モデルの彼1

「あの、すいません…」

『ぎゃぁぁぁあ!金髪サングラスの長身変質者!』

「金髪サングラ……変質者じゃないッス!!」

『あらやだナンパ?』

「緑間っち、知ってる?」

『無視すんなよ…!ていうか君もしんちゃん狙いか!しんちゃんは渡さないんだからね!』ブンブン

「え、ちょ、傘を振り回さないで欲しいっす!」サッ 

『助かったぜレイニーデイ!
傘のおかげでしんちゃんに群がる変質者を一掃してくれるわ!』ブンブン

「だから、変質者じゃ、ないっす!」サッ

「…校門の前で何をしている。
………黄瀬?か?」

『はっ、し、しんちゃん!
…あれ、こいつと知り合いなの?!』

「緑間っち〜!なんすかこの子!いきなり傘を振り回してきて…!」

「こいつはただのクラスメイトだ。」

『そうやってしんちゃんは照れて言わないけど、私はしんちゃんの彼女の名無しのゴンベエだよ!』

「え!?緑間っちに彼女?!」

「黄瀬、冷静に考えろ。俺がこんな奴と付き合うと思うか?」

「………。
…名無しのっち、嘘はいけないっすよ。嘘は。」

『ぐぬぬ…!』





○モデルの彼2


『なるほど、りょうちゃんもキセキの世代、なんだね。』

「そうっす!
今日は緑間っちの練習風景を見に来たっす!」

『じゃあ一緒に見学しようか。
席空いてるかなぁ…』

「…一緒に見学?」

『なんだよ、何か不満かコノヤロー。
私だってしんちゃんを一人で見つめていたいよ!けどさ!中学の時の同級生だよ?!仲良くなって、しんちゃんの情報聞くっきゃないじゃん!』

「いや、そうじゃなくて。女の子から白い目で見られるかもよ?名無しのっち。」

『はぁ?なんで?』

「いや、だって俺…」

りょうちゃんが言いかけた時、女の子達の黄色い声が私の耳を響かせた。

「あれって黄瀬くんじゃない?」

「あっ、本当だ!本物の黄瀬くんだ!」

「なんでここにいるんだろ…サインもらえるかな?!」

「話しかけてみようよ!
黄瀬くーん!」

りょうちゃんは若干眉を寄せた後、シャララと効果音でもつきそうなほどの爽やかスマイルで女の子達の相手をしはじめた。
…りょうちゃんって何者だよ。





○モデルの彼3


『読者モデル?』

「そうっす!…ていうか知らないんすか?!
…へこむなぁ。」

女の子達から開放された後、しんちゃんの練習を見守るために、ただいま体育館上方のベンチにいます。

『ごめん、私しんちゃんにしか興味無いから。』

すねるりょうちゃんにそう宣言する。
…いやでも、読モだからってあの人気はすごい。
確かにりょうちゃんはイケメンだし、スタイル良いし。まぁ納得である。

「緑間っちのどこに惚れたんすか?」

不思議そうにりょうちゃんが尋ねた。
きっかけとなる出来事を思い出して、思わず顔が真っ赤になる。
コートで練習をするしんちゃんを眺めている時にそんな事を言われたのでなおさら恥ずかしさ倍増だ。

『え、それ言わなきゃダメなの?』

「うん。激しく気になる。」

『えー…いや、教えないっす。』

「余計気になってきたっす。」

適当にごまかしたものの顔の火照りは冷めなくて、それをりょうちゃんにまた笑われた。
その様子をしんちゃんが複雑な表情で見ていた事なんて、全然気づかなかった。




○エロ本の彼1


自転車が途中でパンクしてしまったため、ひいひい言いながら坂道を登る。
いや、もう、ダメだって。
本当は今日は友人数人と遊ぶ約束なのだが…この様子だと遅刻は決定だ。
あきらめて断りのメールを送る。

疲れたところで近くにコンビニを発見する。
アイスでも買って食べよう…暑いし。

コンビニに入り、まずはアイスコーナーへ…と思っていたけど、雑誌を立ち読みする長身の男に釘付けになる。

間違いない。りょうちゃんに教わったキセキの世代の一人に酷似している。

褐色に焼けた肌、深く青い髪、悪人面、そして極め付けのアイドルのエロ本…。

『黒峰…くん?』

「…おい、まさかとは思うがそれは俺の事か?」

『え、人違い?』

「俺は青峰だ。」

はたかれました。



○エロ本の彼2


『ごめんよ、だいちゃん…
あまりの黒さに思わず…』

私がパピコを買って、片割れを渡すと、だいちゃんは悪ぃな、といって受け取ってくれた。
以外と話しやすい人なのかもしれない。

「で、お前は誰だ?」

『あ、私は秀徳の一年、名無しのゴンベエ!よろしくね。』

「秀徳っつーと…緑間か。」

『で、私はしんちゃんの彼女』

そこで彼はぶっふぉ、とむせた。

「え、は、マジかよ。」

『…になる予定。』

「いや、どっちにしろ…お前緑間が好きなのか?」

『イエス!!毎日愛を囁いてるんだけどね…全然効果なしですよ…。』

「いや、あいつそういう事に関して鈍いからそれぐらいした方が良いと思うぞ。」

『そうなの?!
じゃあ頑張る!』

「あぁ…でもあいつ、確か…」

私はだいちゃんが次に言った言葉に凍りついた。




○エロ本の彼3



『しんちゃん…留年して下さい…。』

「何を馬鹿な事を。」

『だって昨日だいちゃんが…』

「おいまて、だいちゃんってまさかとは思うが…」

『青峰くんだよ……。』

「あいつに会ったのか…」

『うん。それでだいちゃんが、しんちゃんは年上の人がタイプだって…!』

「なっ…!」

しんちゃんの顔が途端に赤くなる。

『やっぱり年上の人が好きなんだ…!くやしいぃぃぃ!』

「…俺は落ち着いて大人びた人が理想だと言っただけで…別に年上に限定したわけではないのだよ。」

『そ、そっか…』

ん、あれ?
…どっちにしろ落ち着いて大人びた人って私と真反対…!
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