変態女と加藤くん

□明け方の出来事。
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明け方の出来事。




とにかくその日は寒かったのだ。


意識が覚醒するが、まだ寝足りない感覚がある。
朝日も差し込んでいないようだし、明け方なのだろう。


オレはそう判断すると、あまりの寒さに身震いした。
寒がりなのだ。

だから咄嗟に近くにあった暖かい物体を抱き寄せた。
…?何だこれ?



おそるおそる目を開けると、そこにはぷーすか眠っている変態がいた。


「のわぁぁぁっ!!?」
『きゃぁあぁっ!!?』


驚いて叫ぶと変態もその声で起きたようだ。


「なんでお前がここにいんだよ!?」


『…昨日の夜の事忘れちゃったの…?』


「昨日は同室の奴とウノして寝た!
真面目に答えろ!」


『多分寝てる間に能力発動しちゃったんだと…』

申し訳なさそうに奴は頭をかく。

故意じゃないのが分かったら心配になってきた。


「オレだったからよかったものの、他の奴の所に行ってたらどうするつもりなんだ。
危ないじゃないか。」


少し怒気をはらんだ声で言う。
この変態は黙っていたら可愛いのだから。


『…今回ここに来ちゃったのは、加藤きゅんに会いたいなーって、寝る前に思ってたから…。
だから他の所に何てとばないのです。』


恥ずかしそうに言う変態に呆気にとられる。
なんか可愛くないか、こいつ。


っ!?いや、顔がな!?
誰に向けたのかも分からない言い訳を思う。


そして思わず安心した。


…安心した?
ぇ、ちょっとまて、何で?!
オレはこいつの事なんてどうとも思ってないわけで、なのに、

「……。」

『加藤きゅん?』

「……。」

『おーい。加藤きゅーん。』

「…無い無い。んなわけない。」

オレがこんな変態を好きになるなんて、無い。

考えていたら眠くなって、オレはそのまま意識を飛ばした。








…加藤きゅんが寝てしまった。
私を抱きしめたままで。

最初、寒かったのか抱き寄せた時のままになっているのだ。


『加藤きゅん!ちょっと起きて!!』


呼びかけても彼は起きない。
抜け出そうとしても彼の両腕でがっちりホールドされていて、抜け出せない。


いつも愛を語るのは、彼がちゃんと冗談と受け取ってツッコミをいれてくれるからで、


しかし、この状況ではそうもいかない。


『…そんな寝顔してたらキスしちゃうぞーっ!』


そういっても彼は眠ったまま微動だにしない。


諦めて寝ることにした。

だがもちろん落ち着いて寝られるわけがなかった。
片思いの相手なのだ。


(加藤きゅんは全然私の事意識してないみたいだけど。)


意識していたらこのまま寝れるわけない。
少し悲しくなった。


しょうがなく、眠る加藤きゅんを観察する。

(まつげ長いな〜…
うわ、髪、すごくサラサラ!!
羨ましい!!)


いつもは結んでいる髪がほどかれているのでサラサラもてあそぶ。


すると、くすぐったくなったのか、加藤きゅんは顔をさげた。

そしてちょうど私の首元に顔をうずめてしまった。


それだけならまだ我慢できるのだが、加藤きゅんの息が首にかかってくすぐったい。


『ちょっ、加藤きゅん!くすぐったい!!』


バシバシ彼の背中を叩くと、


「…んぅ?」


と、掠れた声が聞こえた。


わぁ、色っぽい、ペロペロしたぁい!
…じゃなくて、


『首!くすぐったいから離して!!加藤きゅん!!
さもないと襲うよ!?』


よし、これなら起きるだろう。
離れろ変態
と言うに違いない。

しかし、予想は外れた。


「…襲えるんだったら、襲えば?」


は?
なんか加藤きゅんがおかしい。
まだちゃんと覚醒してないからなのだろうか。


硬直していると、くつくつと笑い声が首元で聞こえた。


私が加藤きゅんを襲えないのを見越して言っているのだ。


『あ〜も〜離してってば!!』

いつもと完全に立場が逆だ。

「…五月蝿い。」

加藤きゅんはそう言うと、私をさらに抱き寄せた。







思わせぶりな態度はやめて欲しい
(誤解してしまうわ)


「おい変態、お前いつ帰ったんだよ?
オレに変な事してないだろうな?」

『変態だったのはむしろ加藤きゅんの方です!!』

「はぁ?」

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