☆一次創作小説☆

□時の循環1
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 ○年○月○日、○地方の○神社の桜の木に幼児の女の子が荒縄によって縛られて死んでいたのが発見されたと言われる。
 辺りは見通しがよく、その中でも桜の木は神社のシンボルとして大事にされており、桜の木の周りは常に綺麗にされていた。
 また、神社付近には幼児2人しかおらず、この事件は迷宮入りとなった。

        ***


「……という話。なんだか奇妙だね、幼児が木の幹に縛られているって」
「うん……、でも近所だから親近感が湧いたかな」
「確かに……」
「カリスの見つけてきた都市伝説とても興味深かったよ、ありがとう」

カリスは彼女が喜んでくれて本当によかったと、心からそう思った。
彼女のためなら、何だってしてあげようと思った。カリスにとって、彼女は誰よりも…自然のあらゆるものを持ってしても敵うものはいなかった。
夕日がだいぶ沈んでいる。……夜がやってくる。

カリスは愛梨を家まで送った後、家には帰らず山の方に向かって歩き始めていた。

カリスは、どうしてもその神社に行かなければならないという異常な義務感に襲われていた。
その目で、その耳で、五感を全て使って都市伝説の場所を感じとらなければならない、と。

幸い、その神社の位置は知っていた。この前のお正月に家族で御参りをしたからだ。その時は、寒いのと人ごみで桜の木があったことすら覚えていない。だからこそ、今度はしっかりとその木を…目に焼き付けなければ。
街灯の薄暗い明りを頼りに、歩き続ける。そして、街灯の間隔が少しずつ広くなっていく。
…あと少し。あと少しで……会える。
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