☆一次創作小説☆

□時の循環1
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 片岡愛梨は友好関係というものが大きく欠落していた。
彼女とまともに会話が出来るのは、親友であるカリスと幼馴染で幼いころから常に傍にいた恋人と呼べる存在の正輝だけである。
 彼女の両親でさえ、愛梨には諦めの色を見せている。
 愛梨にとってこの二人なくしては、世界が色あせ、生きている価値さえ見出せないのだ。
 
 彼女は都市伝説が昔から好きだった。
カリスはよく愛梨に都市伝説の話を聞かせてあげた。
今日もまた一つ、新しい都市伝説を話してあげようとカリスは放課後の校門の前で愛梨を待っていたところであった。

カタパタカタパタ……
「……カリス、遅れてごめんね」
息の上がった体を落ち着かせてから一言、口から漏らした。
「気にしないで。また、先生の御説教でしょ。……それより、正輝は?」
「あぁ。先生に捕まったみたい」
「……先に帰ろっか」

カリスはどちらかというと正輝の事をよく知らなかった。詳しく知っているのは幼馴染である愛梨と彼の両親だけではないだろうかとカリスは考える。
カリスは4年前、ちょうど中学1年生の時に日本に転校してきたのだ。イギリス人の父を持ち、日本人の母を持った彼女は両親の離婚と同時に、母の母国である日本へと連れられてきた。
常にイギリスに住んでいた彼女にとって、日本という国は何もかもが不思議で仕方がなかった。そして同時に、彼女は日本という国が苦手であった。金色の髪を持ち青色の眼を持った、それだけで彼女を好奇心の目で、時には軽蔑の眼で見るからだ。それだけなら我慢が出来るものの、日本人は愛想笑いというものを良くすると言われる。実際そうであった。嫌いな人でも、その場では笑って過ごし、そしてその人が去った瞬間、なんとも恐ろしい姿をあらわにするのだ。その変化する瞬間が彼女は異常に苦手であった。だから、変化する瞬間の持たない愛梨のそばは彼女にとって心地よかった。そして必然的に愛梨のそばにいた正輝とも一緒に居るようになったのだ。
だから、正輝の事を詳しくは知らない。愛梨を通しての関係だから詳しく知っているはずがないのだ。
カリスはいつも考える。2人の邪魔をしては良かったのだろうかと。2人の空間に埋もれてしまってはよかったのだろうか、と……。

「…カリス?…考え事してるの」
どこか心配そうな目で愛梨は頭一つ分高いカリスを見上げた。
「いや、何でもないよ……。…そうそう、今日携帯を見てたらすごく興味深い都市伝説を見つけたんだ」

その言葉を紡いだ瞬間、愛梨の眼は輝きを放つ。
「本当?!…カリスの見つけた都市伝説の話、聞きたい」
「聞いて驚かないでよ?実はね、ここらの地方の都市伝説だったんだよね、仕入れたの」

「初めてだね、この地方って」
「うん、今から話すけど絶対聞いた後驚くよ」
「カリスが渋るなんて…、でどんな都市伝説?」

「…3人の人間が絡む話なんだけど…」

       ***

           
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