中編てきなもの

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アタシが食料調達のため安全な集落から出て、適当に歩いてた時、
一人の同年代ぐらいの女の子が木にもたれ掛かって座っていました。

・・・て、なんだこの話し方。
昔話じゃないんだから。

まぁ確かにいるんだよ。
座ってる女の子が。

どう見ても戦えるようには見えない。
それなのにこんな、いつ殺し合いが起こってもおかしくないような場所にいるなんてどういうことだよ。

この80地区ははっきり言って集落以外はバトルフィールドみたいなもの。
・・・バトルフィールドはないか。
要は戦場だ、戦場。

あの子はそれを知ってているのか、それとも知らずにここにいるのか。
何にせよ命知らずには変わらない。

とりあえず声かけてみるか。

「あんた、ここにいたら死ぬぞ」

「!・・・」

声をかけたら睨まれた。
てことは、ここは物騒なところだと分かってるんだな。
でもこんなに近づいてんのに今まで気づかないって・・・。

警戒心があるのか否か。

「殺す気はないから。睨むなよ」

「・・・」

「といっても、信じてもらえないか」

「だって貴女からは血の臭いがする」

「へぇー、勘が鋭い。確かにアタシは何人も殺してきたからね」

これを聞いた途端に女の子の眼の色が変わった。

「じゃあ・・・、」

完全に警戒されてるよ。

「でも無駄な殺し合いはしない性質なんで。だからあんたを殺す気はない」

「なら貴女はどうしてここに?」

「食料調達」

「・・・ご飯・・・」

その時ちょうど女の子の腹が鳴った。

あ、めっちゃ照れてる。
顔真っ赤だし。

「あんた腹減ってんだ」

「う、うん・・・」

「じゃああんたの分も採ってきてやるから」

「え?」

「といっても、そこら辺になってる果物とかなんだけど」

「いいの?」

「構わないよ」

「あ、ありがとう」

「礼はいいから。とりあえず集落に行くか。あそこなら殺し合いもない」

この子も一緒に連れて行くわけにもいかないし。
まずはこの子の安全確保から。

「うん」

それで集落に向かって歩き始めた。

「・・・えっと、紺野すみれです」

「あー、そういえば。アタシは六車キスイだ。キスイでいいし敬語もいらない」

「分かった。よろしく、キスイ」

そう言ってすみれは笑顔を始めて見せた。
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