中編てきなモノ

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これで終わり、かな。

ずっと書類をするために下を向いていたから、首が痛い。
俺は首を回して、ついでに肩も回す。
ポキポキと骨が鳴る。
こういう音を聞くと自分が仕事を成し遂げた達成感を感じることができる。

ふと蒼が視界に入る。
机に突っ伏していた。

「寝てんのか・・・・」

全く動かない蒼を見て、俺はそう察した。

そういやこいつ残業続きだったっけ。
しかも残業続きでもちゃんと鍛錬もしている。
そりゃ眠くなるのも当たり前だよな。

俺は立って蒼のまだやっていない書類を何枚か取った。

手伝ってやるか。

今度蒼に非番をあげようと思いながら、自分の席に着く。

そして蒼の書類をやり始めると、

「へぇー、優しいじゃねぇか」

いきなり聞いたこともない低い声が前方から聞こえる。

俺は声の方を向くと、執務室の閉まったドアに寄りかかっている一人の男が立っていた。

「お前は誰だ」

警戒しながら聞く。

「龍虎。蒼の斬魄刀さ。お前は檜佐木修兵、だったっけか」

蒼の斬魄刀。
あの白と黒の刃を持つ両刃剣か。

「そうだが、何でここに具象化がいるんだ?」

「いや、俺は具象化じゃない。この姿が本体なんだ」

「は?」

明らかに人型である龍虎は具象化だと思った。
それが違う?

「俺に具象化は必要ない。というか、そんなものめんどくせぇよ」

さすが蒼の斬魄刀だけある。
同じめんどくさがり。

待てよ。
おかしい。

「お前が具象化じゃないのに、俺は龍虎が見えてるぞ」

「だろうな」

龍虎は少し笑いながら、

「やはり蒼とお前は似ている」

と言ってきた。

「どこがだよ?」

乱菊さんにも言われたが、似ているところなんて全くない。

「心の奥底」

心の奥底―・・・・

俺と、蒼が、似ている。

「蒼はずいぶん檜佐木修兵に懐いているようだな」

懐かれていると思ったことはない。
ただ他人から見たらそうなるんだろう。

「また、檜佐木修兵も蒼を信頼している」

「あぁ」

信頼している。

「そうか。じゃあ一つ訊こう」

ドアに寄りかかるのをやめ、ちゃんと立ち、正常な左目と瞳孔が開き切っていかれた右目で俺を見据える。

それを見て、俺に緊張が走る。








「何があっても、蒼の傍にいられるか?」








この質問に、俺はすぐに答えることができた。







俺の答えを聞いた時、龍虎は少し笑った。
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