昨日の自分にさようなら
□初めまして
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(本当に何もなくなっちゃったな……)
私は、何もなくなった家を見てなんだか少し感傷的になっていた。
この家では母さんと二人一緒に過ごしてきた。
ご飯食べたり、
ドラマ見たり、
仕事の愚痴聞いたり、
ちょっと喧嘩したり、
たまに勉強なんかも教えてもらったりして……
途中から母さんはいなくなってしまったけど、
悲しくはなかった。
母さんとの思い出や残していってくれたものは全部ここにあったから。
母さんがいつも見守っていてくれたような気がしたから。
正直、この家からは離れたくなかった。
でも、先祖返りである私は、身を守るためにはこのままこの家に居るわけにはいかない。
『今日でこの家ともお別れだよ』
私は母さんの写真に向かって言った。
『…っと。いつまでも感傷に浸ってる場合じゃない』
もうそろそろ、妖館へ行く迎えが来るはずだ。
本当は、あまり迷惑をかけたくなかったから、自分で行きたかったのだが…念のためと思紋さんに押されてしまった。
ちなみに迎えに来る人は私のSSさんらしい。
あ、そうそう!
SSってボディーガードのことで広辞苑とかにも載ってるらしいね!
それまでSSって如何わしい何かかと思ってたよ!
−−−ピンポーン……
あ、多分SSの人だ!
『はー……い?』
「その中途半端な返事はなんだ?」
目の前にいたのは、私が借金取りの人だと勘違いした元凶の………
『金髪赤目の借金取り運転手!!!』
「どういう覚え方だ。そして借金取りってなんだ」
しまった!借金取りは自分の心の中に閉まっておこうとしたのに…
『うっ…え、えーっと、…どちら様ですか?』
「今日からお前のSSの狛原咲斗だ。」
『ええっ!貴方が狛原さん!?…あ、えっと、
天条瑞希です』
「知ってる。あと、苗字で呼ばれるの嫌いだから名前で呼んでくれ。それとSSだから敬語もいらない。」
『あ、は……うん?』
まぁ、元々そんなお嬢様な環境で育った訳じゃないし…むしろ超庶民派だと思う。
だからラフな感じでいいって言われて有り難いんだけど…
少し戸惑ってしまった。
「準備はもう出来てるな。」
『う、うん!』
まだ慣れていないからか、手探り状態で言ったらふっと咲斗に笑われてしまった。