招き猫(管理人)の小説

□DARK DELIVER第3章
1ページ/15ページ

第1話 
 あの事件から数週間がたった。本当に早かった。拳銃、ライフルを向けられ心に傷を負った生徒も決して少なくなかった。その子達の心のケア。そしてやはり私立だからだろうか。親からは連日質問の電話。教師はその対応に追われた。
 また、県の教育委員会への報告……たった数時間の出来事だったのに目の前には問題が山積みになっている。生徒に死者や怪我がなかったことが唯一の救いかもしれなかった。
 『現在調査中』その五文字を伝える事しかできなかった。教師自身も何が起こったのかは正確に理解していない。

 そしてこの日、やっとしっかりとした報告会をできる時間が出来た。会議室には教員が全員集まっていた。そして、祐也達5人。ここまでは分かるが他にも数名の生徒がいた。

 ここで少し学校のシステムについて説明する。生徒の自立性を高めるため、この学校では生徒会メンバーに様々な権威が与えられている。部活動の予算編成、行事の計画、実行。学校内での問題……この学校を実際に動かしているのは生徒会なのである。教員は全く口を挟まない。
 生徒会のメンバーは会長1名、副会長2名、各委員会の委員長から成り立っている。
 そのことから今回の件についても生徒会には知らせたほうが良いということでここにいる。

 全員がそろったのを確認すると校長は、
「では、始めようか。説明は……?」
「私がやります。」
 立ったのは、副会長である祐也だった。
「先生方にはあの日にも一度説明してあると思いますが、生徒会がいますので、もう一度説明させていただきます。」

 そして説明を始めた。自分たちの正体、過去。何が目的だったのか……。会議室に祐也の声が響く。
「以上で説明を終わります。」
「ありがとう。先生方、質問は特にありませんね。ぜは、生徒会は何かありますか?」
「少しだけいいですか?」
 一人の少女が声を上げる。生徒会長である笠原 春香(かさはら はるか)だった。肩にかからない程の短めの髪で、活発そうな少女に見えた。
「あのさ……あいつらがまた来るってことはないの?」
「大丈夫。俺たちがいるし、これから誰が仕向けたのかも捜査し始める。すぐに解決するから。」
「そう……」
 緊張でこわばっていた顔が少し緩む。人数は少ないながらも一応は生徒会長なのだ。逆に人数が少ないからこそ、生徒一人ひとりに対して情がある。もう二度とあんな思いはしてほしくないと思っていた。

「じゃあ、これで終わりましょう。当然だと思いますが口外は無用です。それから……明日から5日間、休みにしようと思っています。先ほど、先生たちとも話し合ったのですが、生徒の心の傷をゆっくり癒すことが大事だと思います。ここで、5日間置いて、ゆっくり休ませようかと思います。よろしいですか、会長?」
「は、はい。私も妥当だと思います。遠方から来ている子もいますし、実家に帰って休めますので。」
「では、よろしくお願いします。」

 放課後……部活動は現在停止している。そのため、祐也は志鶴と一緒帰っていた。
「ねぇ、祐也。休みの間、どうするの?」
「ん〜そうだなぁ……攻めてきた奴らもまたすぐに手を出すわけはないだろ。だから少し時間が空くかな。まぁ、こっちでのんびりするよ。志鶴は実家に帰る?」
「そうしようと思ってる。ちょっと疲れたから……」
「……ごめん……」
「ち、違うよ。そんな意味で言ったんじゃないから。祐也のせいじゃないよ。」
「うん……」

「ねぇ、祐也。京都行かない?」
「はぁ?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ